056 : 砂上の夢1






「さぁ、ここだ。」

リュックが私達を案内したのは、村の中心部からはややはずれた所にある一軒の家だった。
何かの施設等ではなく、個人の家のように見える。
リュックが扉を叩こうとしたまさにその瞬時、不意にその扉が開き、中から中年の女性が顔をのぞかせた。



「あ…どうも!」

「……この子が……!」



女性は、ディヴィッドの顔を見るなリ声を詰まらせ、片手で口元を覆った。



「……リュックさん…?
この人は?」

「それは……だなぁ……」

「食事の用意が出来てるわよ。
さぁ、早くお入りなさいな。」



返事に困るリュックに助け舟をだすように、女性は私達を部屋の中に招き入れた。







「どう?ディヴィッド…おいしい?」

「うん、すっごくおいしいよ!」

「こんな時間まで食べてなかったんだ。
しかも、今日は山登りまでしたんだからな。
腹が減ってただろう?」

「うん!」

笑顔で料理を口に運ぶリュックを見て、女性は満足げに微笑む。

リュックは、この女性のことをまだ何も話さない。
もしかしたら、ディヴィッドの前では話にくいことなのかもしれない。
会話の雰囲気から察する限り、さほど親密な関係ではなさそうだ。



「さぁ、ディヴィッド。
これもおいしいわよ。
明日はこれでパイを焼いてあげましょうね。」

「わぁ!おいしそうなぶどうだ!
僕、ぶどうが大好きなんだ。」

「……まぁ、そうなの!?
もうずいぶん前に死んじゃったけど、私の夫がぶどうが大好きだったのよ。」



ディヴィッドはこの旅に出て以来、人見知りが直ってきたように感じていたが、この女性に対しては特にそんな風に思えた。








「ディヴィッドはもう寝たのか?」

「あぁ、ベッドに寝かせたらあっという間だったよ。」

女性はその報告に穏やかな笑みを浮かべる。



昼食にはずいぶん遅く、かといって夕食には早い曖昧な時間の食事を終え、汗を流させてもらったディヴィッドは、疲れが出たのか、すぐに寝付いたらしい。



「リュック…
それじゃあ、聞かせてもらおうか。
この方がどなたで、なぜここに来たのかを…」

私がそう言うと、リュックと女性は顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。


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