049 : 後朝8
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「やっぱり駄目か……」
地面を打ちつけるような激しい雨に、リュックは小さな溜め息を吐いた。
「……あんたも諦めの悪い男だね。」
呆れたようにそう言うエヴァの隣に、リュックはどさりと腰を降ろした。
だんだんと激しさを増す雨に、エヴァが今夜は泊まっていくようにとすすめ、それを聞いたディヴィッドも目を輝かせてリュックを引き止めた。
その熱意にリュックも負け、泊めてもらうとは答えたものの、早めに雨がやめば戻ろうという気持ちもどこかにあった。
しかし、時が過ぎても雨は激しくなる一方で、はしゃいでいたディヴィッドもついにさっき眠りに着き、リュックとエヴァは二人で静かに酒を酌み交わす。
「だって、今日はここに泊まるなんて言って来てないんだぞ。
マルタンが心配してるかもしれない。」
「小さな子供じゃあるまいし、一晩や二晩戻らないくらいで、心配なんてするもんか。」
「俺達は、いつもずっと一緒なんだ。
何も言わずに勝手なことをすることなんか、滅多にない。」
「へぇ……良い年して仲良しこよしなんだね。」
エヴァの嫌味な口調に、リュックは小さく舌を打つ。
「ところで、エヴァ…
もう少しディヴィッドをかまってやることは出来ないのか?」
「何だい、お説教かい?
あの子があんたに何か言ったのかい?」
「あいつはそんな告げ口みたいな真似はしない。
……だからこそ、不憫に感じるんじゃないか。」
「前にも言ったろ?
あの子はね…私が働かなきゃ食べていけないことはちゃんとわかってるんだ。
そりゃあ、あたしだってわかってるよ。
あの子に寂しい想いをさせてることは……
だけど、仕方がないじゃないか!」
そう言うと、エヴァはグラスの酒をぐびぐびと飲み干した。
「たとえば、昼間の仕事をすることは出来ないのか?」
「……あんたねぇ!」
大きな声を上げたエヴァは、苛立ちをぶつけるかのように拳でテーブルを叩いた。
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