049 : 後朝7
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「どうだい?なかなかいけるだろ?」
「あぁ、うまい!
……本当に良い肉だ!」
「そうじゃないだろ!
あたしの味付けがうまいんだよ!」
三人で囲んだ食卓には、賑やかな笑い声が絶えなかった。
「さぁ、たくさん食べておくれよ。
まだいっぱいあるんだからね!」
「あぁ、遠慮なく食べてるよ。
ディヴィッド、おまえももっとたくさん食べろよ!」
「うん!」
次々と皿を空にしながら、リュックはこれまでの旅の出来事を二人に話して聞かせる。
リュックの少し大袈裟な話しっぷりに、エヴァとディヴィッドは、時には感心したように耳を傾け、そしてまたある時は大きな口を開けて笑った。
「あんたは本当に面白い男だね。
さ、もう一杯飲みなよ。」
「いや、もう良い。
あんまり飲み過ぎると眠くなっちまう。
それに、そろそろ帰らないと……」
「リュック…さっきから雨が降ってる。
もう少し待って、雨が上がってからにした方が良いよ。」
「雨が……?そういや、さっきから曇って来てたが、ついに降り始めたか……」
リュックは立ちあがり、窓の傍に近寄って汚れた窓ガラス越しに外を眺める。
「このくらいなら大丈夫そうだ。
そろそろ……」
不意に握られた手の温もりに、リュックの言葉は途切れた。
「……ディヴィッド…」
「リュックさん、さっきいただいたぶどうをいっしょに食べようよ。
それに、お酒もまだいっぱいあるよ!」
「……そうか。
それじゃあ、いっしょに食べるか!」
ディヴィッドと手を繋いだまま、リュックはまた席に戻った。
「待ってなよ、今、洗って来るから。」
リュックと入れ違うように今度はエヴァが立ち上がり、台所へ向かった。
「……そういえば、ディヴィッド…
おまえ、葡萄の他には何が好きなんだ?
ケーキとかお菓子は好きじゃないのか?」
「うん…他のはあんまり食べたことがないからわからないんだ。
母さんは、甘い物が嫌いだし、果物もあんまり好きじゃないみたいだから。」
「……そうなのか。
……ようし、わかった!
じゃ、今度はもっといろんなもん買って来るからな!」
無造作にディヴィッドの髪を撫でるリュックに、ディヴィッドは照れ臭そうに…だが嬉しそうな笑みを浮かべてリュックをみつめた。
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