049 : 後朝6






「リュックさん、いらっしゃい!」

扉を開くと、ディヴィッドの明るい笑顔がリュックを出迎えた。



「よぉ!ディヴィッド!
……あれ?エヴァ…今日はまだでかけてなかったのか?」

「いらっしゃい。
いつもディヴィッドのこと構ってくれてありがとうよ。
今日は、休みなんだ。
さ、入ってよ。」

いつもは家にいないエヴァの出向かえに少々戸惑いながら、リュックは促されるまま、部屋の中に足を踏み入れた。



「ディヴィッド、おまえ、ぶどうが好きだったよな。
うまそうなのが売ってたから持って来た。」

「リュックさん、いつもどうもありがとう。」

ディヴィッドの喜ぶ顔を見ながら、傍らのエヴァも穏やかに微笑む。



「今日はゆっくりして、夕食でも食べて行きなよ。
そのつもりで、あんたの分も買って来てあるんだ。」

「え…でも……」

「リュックさん、ぜひそうしてよ!
母さん、こう見えても料理はけっこううまいんだよ。
今日は、奮発していつもより良い肉も買ったし……」

「そうか……それじゃあ、遠慮なくいただいていくよ。」

「ようし、じゃあ、頑張ってとびきり美味しいのを作ってくるから、待ってなよ!」

弾んだ声でそう言い残し、エヴァは台所へ向かって行った。
残されたリュックとディヴィッドは、長椅子に並んで腰掛け、他愛ない話を交わし始めた。



「ディヴィッド…本当に良かったのか?
母ちゃんの休みは、月に一度しかないんだろ?
俺がいたんじゃ、邪魔じゃないのか?」

ディヴィッドはそれに対して、素早く頭を振る。



「そんなことないよ。
母さんは、休みの時はたいてい家事をしたり、後は寝てばっかりで……
あ、僕、そのことを不満に思ってるわけじゃないよ。
母さんは普段働き詰めだから疲れるのは当然だし、僕じゃちゃんと出来ないこともあるから、休みの時もいろいろしなくちゃいけないこともあって…悪いと思ってるんだ。
でも、今日はいつもよりずっと早くに起きて…ほら、部屋もいつもより綺麗だろ?
母さんと一緒に掃除して、買い物もいっしょに行って、母さんは機嫌も良かったからいつもよりたくさん話も出来たし……それって、全部リュックさんのおかげなんだ!」

明るい声で話すディヴィッドに、リュックは困惑したような表情でゆっくりと頷く。



「……そうか。
よし、それじゃあ、料理が出来るまで、外でボール投げでもしてよう。
腹すかせた方が、料理がますますうまくなるからな!」

「うん!」

リュックは小さなディヴィッドの肩を抱き、二人は仲良く部屋を出て行った。


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