049 : 後朝4


ディヴィッドは、エヴァとはタイプがまるで異なり、話ぶりや雰囲気がどこか子供らしくない利発な子供だった。
自分の感情をあらわにせず、私達にも酷く気を遣う。
話しかけるとちゃんと丁寧に答えるが、心を開いていないことはすぐに感じられた。
ところが、リュックはそんなことはお構いなしに、いつもの調子でずんずんと踏み込んで行く。
最初はそういうことに戸惑っていたディヴィッドも、彼の誠実さに気付いたのか、いつしかリュックには無邪気な一面を見せるようになっていた。

傍目から見ると、まるでリュックはディヴィッドの父親のようにも見え、そのことがほほえましくもある反面、私を少し不安にもさせた。

リュックには、ナディアという人がいるからだ。
彼は、「あんな約束、ナディアはもう忘れてる」と言い張り、彼女の話を出すと打ちきってしまう。
きっと、リュックは自分の身の上のことがいまだ乗り越えられないでいるのだろう。
本当は見た目よりも何倍も長い時を生きて来た事を。
彼は何に対しても積極的で前向きに見えるが、そのせいで自分に自信が持てないでいる。
もしかしたら、この先のことを考えているのかもしれない。
今は何事もなくとも、この先、どんなことが身の上に起きるかもしれないという不安が今でも拭いされないのかもしれない。
それは仕方のないことだ。
だからこそ、恋愛に対して後ろ向きなのだろう。
その上、いつ終わるかわからない旅を続けているのだから……



彼には幸せになってほしいと思っている。
幸せになれるのなら、その相手がナディアでもエヴァでも私は構わない。
だが、ナディアを裏切るようなことはきっと彼はしないだろう。
たとえ、ナディアと結婚することが出来ないと思いこんでいたとしても……

リュックとはそういう男だ。


- 307 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お題小説トップ 章トップ

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -