049 : 後朝2






「あぁ、飲みすぎた……」

「だらしないねぇ…あのくらいで……」

「あのくらいって……
あんたみたいなうわばみと一緒にしないでくれ。」

「私がうわばみ?冗談だろ。
うちのナタリーさんなんて、私よりずっと酒が強いよ。
そうでなきゃ、こんな商売やっていけないからね。」

エヴァは、そう言って山のようなグラスを洗い始めた。



昨夜は、まるで祭りの晩のようだった。
店に集まった皆が、笑い、歌い、時には喧嘩をし、店に入りきらなかった者達は、表に座りこみ、結局、大半の者は朝まで店に残っていた。
私やリュックもそのうちの一人だ。
いつ眠ってしまったのかさえ記憶がない。
酷い音痴の男の歌で大笑いをした所までは覚えているのだが、その後のことはまるで記憶がなかった。
気が付いた時、私は店のベンチにおかしな態勢で寝ていて、私の足を枕に見知らぬ男が眠っていた。
エヴァも客達に勧められるままに相当な量の酒を飲んでいたと思うが、私が目を覚ました時には店の中にはおらず、どうしたのだろうと考えていると、しばらくして店の奥からひょっこりと顔を出した。
なんでも、昨夜の売上げを計算していたとかで、その顔はしゃっきりとしており、すっかり酔いは覚めているように見え、たいしたものだと密かに関心してしまった。
エヴァと他愛ない話をしている間にも、男達は、一人…また一人と目を覚まし、そのうちにリュックもようやく目を開いた。



「それにしても、二人共酷いな。
せめて、ベンチにでも運んでくれたって良いじゃないか。」

私が目を覚ました時、リュックは他の男達に紛れてカウンターの前の床の上に転がっていた。



「すまん。
起こしてしまうのも悪いかと思ってな。」

「ここの床はこないだ綺麗に掃除したばかりじゃないか。
ま、寝心地はあまり良くはないだろうけど……」

笑いながらそう言うエヴァに、リュックは苦い表情を浮かべながら小さく舌を打つ。



「リュック、まだ眠ってる寝坊すけ達を起こしておくれ。
そろそろ、片付けに取りかからないと……」

エヴァに言われた通り、リュックと私はまだ眠っている数人の男達を起こして回った。



「それじゃあ、次は転がってる酒瓶を集めておくれ。」

「おいおい、俺はこの店の従業員じゃないぞ。」

「何言ってんだい。
俺達がいつでも手伝うからって言ったのを忘れたとは言わせないよ。
さ、文句言わずに動いた、動いた。」

強気のエヴァには文句も言えず、私達は言われるままに、酒瓶を集めにかかった。


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