049 : 後朝1
*
「よ〜し!
暗くなって来たことだし、今日はここらでおしまいにしよう。
皆、ご苦労だったな!」
商店街の片付けも終わり、ここのところは朝早くから金槌を振り下ろす音が町の中に響いていた。
リュックも最近は建築の方に作業を変え、クロワとクロードは、今では院長からこのまま診療所にいてくれないかと言われる程の信頼を得ている。
そして、エヴァの任された酒場も準備が整い、ついに今夜から営業することに決まっている。
「マルタン、クロワさん達にも酒場のことは言ってあるんだろ?」
「あぁ、でも、今日は酒場のオープンを心待ちにしてた人が多そうだから、遠慮しとくって言っていた。」
「そうか…それじゃあ、エヴァにワインでも分けてもらって診療所に持って行くか。
先生もたまには飲みたいだろうからな。
……それで院長の具合はどうなんだ?」
「どこかが特に悪いってわけじゃないらしいが、なんせ高齢だからな。
今までとは違う忙しさのためにかなり疲労されてるらしい。」
「そうか…そりゃあ大変だな…」
私達は、いつものように広場での炊き出しをたいらげると、他の者達とぞろぞろと連れ立って町外れの酒場へ向かった。
*
「いらっしゃい!」
扉を開けると、エヴァの明るい声と笑顔が私達を出迎えた。
「へぇ…前よりもずいぶんと綺麗になってるじゃないか。」
「それに、ここの主人は可愛いな。」
「ありがとうよ。
さ、そんな所に突っ立ってないで、早く中に入んなよ。」
店内はあっという間にむさ苦しい男達で満席となった。
どこの町に行っても酒を好む者は多い。
だから、酒場はどこもそれなりに込んではいるが、ここは他所の町とはいささか事情が違う。
店内に集まっているのは、大変な火災に巻きこまれ、毎日休む間もなく働いて来た者ばかりだ。
普段はあまり飲まない者までもが、今までの疲れと緊張をほぐしにここにやって来ている。
だからこそ、店の中の熱気はどこの酒場よりも熱い。
誰もが幸せそうな顔をして、久し振りの酒を酌み交わした。
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