048 : 数珠つなぎ18






「すごい量じゃないか。
疲れただろう。」

「まぁな……」

リュックの引く荷車には、様々な種類の酒がびっしりと積み込まれていた。
隣町からこれだけの重さのものを引いてくるのは、相当きつい作業だ。
だが、リュックはそんな愚痴は一言も口にしない。
汗を拭いながら店の中に入ったリュックは、長椅子に身体を投げ出すように腰を降ろし、それと同時に白い埃がもうもうと舞いあがった。



「うっ!こりゃあ酷い!」

リュックは、顔をしかめ、舞い上がった埃を手で振り払う。



「私もさっきここに来たばかりで、まだ何もしてないからな。
ところで……」

「あぁ、こっちは隣町の酒場で働いてる……」

「エヴァよ。
よろしくね、マルタン。
週末は、あたしがここに来ることになったから。」

紹介しようとしてくれたリュックの言葉を遮り、エヴァ本人が私に自己紹介をすると、片手を差し出した。



「よろしく。
もう私の名前も知ってくれてるんだね。」

「さっき、リュックがあんたのことをそう呼んでたからね。」

そう言うと、エヴァは無邪気な笑顔を浮かべた。



酒場で働いていると言われなくとも、その派手な身なりやざっくばらんな話し方はそのことを想像させる。
まだ見た目にはリュックと同じくらいに見える若い女性だが、エヴァは職業柄か非常に人慣れた雰囲気のする女性だ。



「じゃ、私はぼちぼち片付け始めるから、君は少し休んでいたら良い。」

「なに言ってんだ。
俺も働くぜ。」

「まぁ、水でも飲んで一休みしろよ。」

私が水筒を差し出すと、リュックは頷きながらそれを受け取った。



「思ってたよりも広さはあるね。
それに、うちの店より家具もしっかりしてるよ。
必要なものもそれなりに揃ってるみたいだし……」

エヴァは店内をきょろきょろと見渡しながら、そう呟いた。



「この店は、君一人でさばくのか?」

「あぁ、もっと小さな店だと思ってたからね。
でも、ま、このくらいならあたし一人でもなんとかなるだろ。
食べるものは簡単なものだけにするってことになってるしね。」

「ま、人手が足りなきゃ俺やマルタンが手伝うさ。
さて、と。
それじゃあ、始めるか!」

リュックは気合いを入れるように膝を叩き、勢い良く立ち上がった。


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