048 : 数珠つなぎ2






「あそこなんだ。」

昼過ぎになって私達はようやく隣町に辿り着き、チェスターは商店街の近くのレストランを指差した。



「わざわざすまなかったな。
わし一人でもどうにかなったんだが、せっかく来てもらったんだ。
夕食には少し早いが、ご馳走したいと思ってな。」

「そいつは嬉しいな。
ちょうど腹がすいてた所なんだ。」

「そうか、この店のシェフはけっこう良い腕してるんだ。
なにかうまいものを作ってもらおう。」



チェスターの心遣いに感謝しながら、私達がレストランへ向かっていた所、ちょうど扉が開き、中からシェフらしき男が出て来た。



「トーマス!」

「あぁ、チェスター!
今日はいつもより遅かったんだな。
あれ…?」

「今日はリンゼイが急な用で来られなくなってな。
それで、この人達が代わりに来てくれたってわけなんだ。」

「そうか、それは大変だったな。
とにかく、まぁ、入ってくれ。」







「本当だ!
チェスターの言う通り、すっごくうまいな!」

トーマスの料理は、このところ、歩き詰めだった私達の身体に、新たな活力を与えてくれるようだった。
ぱっとしない店構えとは裏腹に、料理は味はもちろんのこと、彩りや盛り付けにも凝った繊細なものだ。
だからこそ、この店には客が集まるのだろう。
チェスターの話によれば、昼食時にはしばらく待たなければ入れない程なのだと言う。



「……あれ?トーマスの奴、どうしたんだ?」

私達に料理を出すと、トーマスはまた店の外へ出て行った。



「ええ…今日はちょっと事情があってね……」

「なにかあったのか?」

「実はね……」



トーマスの妻の話によると、今朝、隣町で火事があったそうで、様子を見に彼らの息子が出向いたらしいが、なかなか戻って来ないので心配しているのだという。



「そういや、隣町にはトーマスの妹夫婦が住んでるんだったよな?」

「そうなのよ。
それで、ミックに見に行かせたんだけど……
やっぱり、今日は店を休んで私達が行けば良かったわ。」

トーマスの妻は、外にいる夫の方を眺めながら、憂い顔で呟いた。



「ミックっていうのはあんたらの息子なのか?」

「そうよ。」

「いくつなんだ?」

「今年で十歳よ。」

「なに、まだそんなに小さい子なのか?」

リュックがそう行ったのも無理はない。
トーマス夫妻の年齢から考えれば、もう少し年上の子供だと思うのが一般的だ。


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