048 : 数珠つなぎ1






「へぇ…リンゼイが、家に……
そいつは良かった。」

私達が着いたのは、ちょうどチェスターが出荷する作物を収穫している所だった。
それを見ては私達も休むわけにもいかず、早速、彼の作業を手伝った。



「あぁ、家に着いた時のリンゼイはすごかったぜ。
本心では、あんなにおふくろさんのことを想ってたんだなぁ……」

「そうか……
いや、実は、リンゼイのご両親とは何度も会ったことがあるんだ。
ここ数年はメイドさんが来るようになってるが、毎回リンゼイの様子を聞いて、わしにリンゼイのことを頼むって、そりゃあ真剣に言われててな。
リンゼイには畑仕事を手伝ってもらうことで、部屋代はただってことになってるんだが、本当は毎月部屋代をもらってるんだ。
あ、わしから催促したわけじゃないぞ。
あの家はわしのおふくろが住んでた家で、もう何年もほったらかしてたものだし、わしはそんなものはいらないと言ったんだが、リンゼイの両親がどうしてもって言うもんでな。
本当にあの娘は両親に愛されてると思ったよ。
だから、早く和解すれば良いと思ってはいたが、わしがその話をしようとしてもあの子はすぐに話をはぐらかしてしまってな……」

私達は、そんな会話を交わしながら荷車に積んだ作物を引き、ゆっくりと隣町を目指した。



「……それで、この野菜は市場に出すのか?」

「いや、古くからうちの野菜を使ってくれてるレストランがあってな。
そこへ持って行くんだ。」

言われてみれば、リンゼイの家の周りの畑はそう広くはない。
収穫量は市に出して売る程のものではなかった。
だからこそ、畑仕事には不慣れなリンゼイにもなんとか出来ていたのだろう。
リンゼイはとても気にしていたが、このくらいの量ならチェスター一人でも運べないことはない。

ビルは、リンゼイの父親くらいの初老の男だった。
彼が時折のぞかせる人懐っこい笑顔は、人の善さを感じさせる。



「リンゼイさんはあなたにとても感謝していましたよ。」

「へぇ…あの子がそんなことを…?
わしは感謝されるようなことは何もしちゃいない。
部屋代まで受け取ってたことを知ったら、きっとびっくりするだろうな。」

そう言って、無邪気な微笑む彼に、私はますます好感を感じた。


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