047 : 猫の目13






「母さん!母さん!
開けて!リンゼイよ!」

私達はほとんど休むことなく、あの山の上の屋敷まで歩き続けた。
おかげで、リンゼイの住む町まで行った時の半分強で戻ることが出来た。



「おかしいわ…誰も出てこない……
母さん!母さん!!」

リンゼイは半狂乱になりながら、扉を叩き続ける。



「リンゼイ、離れてろ!」

リュックはリンゼイの身体をそっと脇に促すと、勢いをつけて扉に体当たりした。
しかし、その扉は見た目通りとても頑丈なもので、小柄なリュックはもんどりうって倒れただけだった。



「畜生!なんて固い扉なんだ。
よ〜し!もう一度!」

リュックは悪態を吐きながら起きあがり、身体に付いた土を払う。




「リュック、それよりもあの窓を壊した方が良いんじゃないか?」

私は玄関の脇にある窓を指差した。



「そうだな!」

リュックがきょろきょろとあたりを見まわし、小さな植木罰を持ち上げた。




「みんな、離れてろ!」

そう言うと、リュックは植木鉢を窓に目掛けて投げつける。
大きく乾いた音を立てて、窓ガラスは砕け散った。
そして、それと同時に家の中から女性の叫び声が……




「誰かいるのか!?」

リュックが窓の近くに駆け寄ろうとした時、リンゼイが彼の服をひっぱった。



「裏口があるんです!あそこから入りましょう!」

リンゼイを先頭にして着いて行くと、屋敷の裏手に小さな扉があった。
一応、簡単な鍵がかかっていたが、リュックが少し力を込めただけで、鍵は壊れ扉が開いた。



「母さん、母さん!!」

家の中になだれ込んだリンゼイは、泣きながら母親を呼びながら部屋の中を動き続ける。




「リンゼイ……!」

「母さん……!」



幸いなことに彼女の母親は生きており、それを見たリンゼイは勢い良く母親の胸に飛びこんだ。




「母さん!なんて馬鹿なことを……!」

「あ…い、痛いっっ!」

「え……?」



辛そうに顔を歪めた母親に、リンゼイは呆然としながらも母親から身体を離した。


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