047 : 猫の目12
「お父様が亡くなられたから、リンゼイさんが引き継がれたってことなのかしら?」
クロワの言葉に、リンゼイは小さく首を振る。
「いいえ……
父が亡くなった時には私はすでに家を出てましたし、順序からいっても指輪は母のものになります。
ですから、母が持っていたはずですが、そんな大切なものを私に手渡すなんて……」
「……そうだよな?
この指輪は持ち主が亡くなった時にしか、引継ぎは出来ないって言われてるんだろ?
でも、あんたが隣の大陸に移るって言ったから、それでおふくろさんはその言いつけを破ったんだな。」
「そんな……父はこの指輪のことはとても大切にしてましたし、私も小さい頃からいやというほど聞かされていました。
ですから母も当然父からはしっかりと聞かされてるはずです……
……ま、まさか、母さん……!!」
突然、リンゼイは感情的な声を上げ、口元を押さえた。
「い、一体、どうしたんだ!?」
「私…今から、家に戻ります!」
リンゼイは立ち上がり、思い詰めた顔でそう言った。
「それは良いことだが、今からじゃ夜道を歩くことになる。
明日になってから……」
「母さんは、死ぬつもりなのかもしれない……」
「な、なんだって…!?」
「だって、この指輪は持ち主が亡くなった時じゃないと引き継いじゃいけないってことになっているんです!
それを私に渡すってことは、きっと母さん……」
リンゼイの身体は、興奮のためか小刻みに震えていた。
「そんな馬鹿な……リンゼイさん、ちょっと落ち着いて……」
「そういえば、メイドさんが実家に戻られてるっておっしゃってたけど……
まさか、それって……」
「……リンゼイさん!俺達も着いて行くぜ!」
クロワの言葉に、リュックも急に不安を感じたのか、私達はリンゼイを連れ、すぐさまあの山の上の屋敷に引き返すこととなった。
- 281 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
お題小説トップ 章トップ