047 : 猫の目4
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「じゃあ、頼んだぜ!」
「あぁ、任せてくれ。」
私達はアンディに手を振りながら、彼の家を後にした。
アンディの頼み事というのは、依頼されていた指輪を渡して来てほしいということだった。
依頼人は、この先の町はずれの山に住んでいるそうで、足を痛めているアンディには辛い場所だ。
しかし、今日手渡す約束をしていたため、私達に代わりに届けてもらえないかということだった。
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「へぇ…綺麗な宝石だな。
この光の筋みたいなの…珍しいな。」
「これは猫目石といって、持ち主を守ってくれるとかいろんな伝説のある石なんだ。
この石は元は違う台座にはまっててな
それを新しいものに変えてほしいとの依頼だったんだ。
飽きたから見た目を変えたいのかとも思ったが、今日までにって依頼だったから、それだけじゃないのかもしれないな。」
「そうだな。
そういうことなら、そんなに急がせたりはしないだろう。
期限を切るっていうのは、きっとなにか大切な意味があるんだろうな。」
「だろうな……」
アンディは真面目な男だ。
本来ならば、依頼されたものを他人に任せるなんてとても出来ないそうだが、今日までにと言われていたこと…そして、一泊とはいえ一緒に過ごしたことで私達を信頼出来る人物だと判断し、それで私達に託すことを決心したようだった。
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「あ、あれじゃないか?」
アンディの言っていた屋敷はすぐにわかった。
隣町の手前にある山の中腹に、たった一軒ぽつんと佇むその屋敷は、古いが立派なものだということが遠くからでもすぐにわかった。
「しっかし、なんであんな所に建てたんだろうな?」
リュックは屋敷に目を遣りながら、ゆっくりと首をひねる。
「そうだな……あまり、人と関わりたくなかったのか……或いはあそこからの見晴らしの良さが気に入ったのかもしれないぞ。」
「あぁ、確かにあそこからの眺めは良さそうだな。」
「空気も良さそうね。」
私達は、他愛ない会話を交わしながら、山の上の屋敷を目指し歩き続けた。
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