047 : 猫の目2
*
「い、いてぇ!」
男は、顔を歪め痛々しい声を上げた。
「幸いなことに骨は折れてはいません。
ですが、おそらくひびが入ってると思われます。」
「ほ、骨にひびが!?
そ、それで、治るのかい?」
「もちろんですよ。
ただ、すぐにというわけにはいきません。
それに、少なくとも数日は安静にしておかないと……
とにかく治療しましょう…えっと、添え木に出来るようなものはありませんか?」
「添え木?
薪なら家の裏にあるが……」
「そうですか。
では、リュックさん、すみませんがそれをこのくらいの長さに切ってきていただけないでしょうか?」
クロードは、両手で木の長さを示した。
「わかった。
待ってろよ。」
小さな町に着いて早々、私達は怪我人に遭遇した。
なんでも山菜を採りに行った時に岩に蹴躓いて転んだということだったが、男の痛みようは酷く、どうにか町までは辿り着いたものの、家まで歩くのもままならない状態だったらしく、華奢な老人が男に肩を貸していた。
それを見たリュックが老人に代わり、私と二人で男を両脇から抱えるようにして、彼の家に連れ戻った。
*
「はい、これで大丈夫ですよ。」
「それと、これは痛み止めのお薬です。」
「ありがとう!本当に助かったよ。
この町には医者もいないから、雪の街の診療所に運んでもらわなきゃならないところだった。
あ、俺、まだ名前も言ってなかったな。
アンディだ。よろしくな。」
私達も彼に倣い、簡単な自己紹介をした。
「ところで、あんた…ここには一人で住んでるのか?」
「あぁ、そうだ。
元は親方の家だったんだが、数年前に親方夫婦も死んじまって、それからは俺一人で住ませてもらってるんだ。
あ……そういえば、あんたら、旅をしてるって言ってたな?
良かったら、今夜はここに泊まっていったらどうだい?」
「良いのか?」
「あぁ、部屋は空いてるし、こんなことくらいじゃお礼にもならないが、採ってきた山菜もあるから食べてってくれよ。
腹減っただろ?
今、すぐに食事の支度を……」
「あ!あんたは座ってろ!
食事のことなら、俺達がやるから……」
リュックが、立ち上ろうとしたアンディの肩を優しく制する。
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