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「リュックさん、それで……
入院費やその他のお金のことなんですが……」
「カール…まだそんなこと言ってるのか?
そんなものは……」
「だめです!
そんなことをしたら……母さんに……母さんに叱られます!」
今にも毀れ落ちそうな涙をいっぱい浮かべながら、カールはリュックをじっと見据える。
リュックはそんなカールをみつめながら、返す言葉を捜すようにしばらくの間沈黙した。
「カール……
その金は、二人への口止め料だ。」
「口止め料……?」
怪訝な表情を浮かべたカールは、リュックの言葉を繰り返す。
「そうだ。
あの薬草のこと…おまえ達は知ってるよな?
あれは使い道によってとても危険なものだ。
おまえ達がそのことを誰かに話したら……そしてそれをたまたま悪い奴が知ってしまったら、大変なことになる。
根こそぎ刈り取ってしまえば良いようなもんだが、あれは使い方さえ間違わなけりゃあ、苦しんでる人を助けることも出来る貴重な薬草だ。
……だから、俺はおまえ達に口止め料を払う必要があるんだ。」
「僕達は、そんなものもらわなくても、誰にも言いません。」
「リュックさん……わかったよ。」
「兄さん!」
重なった兄の声に、カールは驚いた顔を向けた。
「カール…俺はおまえと違って真面目じゃない。
これから先だって、金に困ったらあの薬草のことを誰かに話してしまうかもしれない。
だけど…口止め料のことを考えたら、さすがに言えないよな。
……リュックさん、そういうわけだから……お世話になった分のお金はありがたくいただいておきます。」
「兄さん!!」
カールは咎めるような口調で、兄の名を呼ぶ。
「……テリー、ありがとう。
そうしてもらえると、俺達も安心出来る。」
リュックは頷きながら、テリーの手を力強く握り締めた。
テリーは、はにかみながら小さく頷き、私はそんな彼の様子にどこかほっとするような気持ちを感じた。
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