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「う、嘘だ!
だ、だって、母さんはだんだん元気になって来てて……
昨日、花のことを楽しみにしてるって笑ったばかりで……」



その報せがあったのは、まだ夜も明けきらない早朝の頃だった。
私達が駆け付けた時には、カトリーヌはすでに事切れており、その傍らに赤い目をしたカールとクロワが立ち尽していた。



「兄さん……ごめんなさい。
僕が付いてたのに…こんなことになって……」

カールが顔を伏せ、か細い声でそう言った。



「カール!どうしたんだ!
なぜこんなことに……」

「テリー…すまない。
突然の発作で……私達にもどうすることも出来なかった……」

「そ、そんな……」




いつも冷静なクロードが、珍しく感情を表に現していた。
その様子から、彼にとっても全く予想外の事態だったのだと私は感じた。



私が予想していたテリー達の幸せな未来は、実現することなく砕け散った。
悲しみに打ちひしがれる彼らの嗚咽を耳にしながら、私にはかける言葉さえみつけられず、ただカトリーヌの冥福を祈る事しか出来なかった。







「……いろいろと、どうもありがとうございました。」

カトリーヌの葬儀が済み、慌しく数日の時が流れた。
テリー兄弟は、ようやく落ちつきを取り戻した。
むろん、心の中はまだ整理が出来てないだろうが、二人はこれ以上私達に面倒はかけられない、もう大丈夫だと、子供らしくない気遣いを見せた。



「本当に二人で大丈夫なのか?」

「大丈夫です。
僕も病院の下働きをさせてもらえることになりましたし、これからは兄さんと二人で力を合わせて暮らしていきます。」

「そうか……」

カールは母親の死後、また一段と大人びた雰囲気を感じさせるようになっていた。


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