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「わぁ〜!すごいや!」
テリーは観察力が鋭いようで、玄関のドアがすんなり開くようになったことにもすぐに気付き、家の中に入ってからも次から次に修理した箇所に気付いて、喜んでくれた。
テリーの明るい笑顔を見ると、疲れもいっぺんに吹き飛んだ。
「屋根も床も直しといたから、もう雨漏りなんてしないぞ。
「ありがとう、リュックさん、マルタンさん!
二人は大工さんだったのかい?」
「いや、これは趣味…みたいなもんだな。
趣味にしたら、うまく出来てるだろ?
俺、きっとこういう才能あるんだな。」
リュックはそう言って、おどけて胸を張り、テリーはそれを見てくすりと笑う。
「本当にたいしたもんだよ。
俺はこんなに綺麗に直せなかったし、あっという間にだめになってしまった…」
「いや、けっこううまく直してあったぞ。
ただ、材料が良くなかっただけだ。
道具だって持ってないんだろう?
それにしちゃあうまく出来てたぜ。」
リュックの誉め言葉にテリーははにかんで顔を伏せた。
「ところで、テリー…母さんの所には寄って来たのか?」
「うん、母さん、リュックさん達に会いたがってたよ。
みんなのおかげで命が救われたって、すごく感謝してた。」
「そうか、そいつは良かったな。
また、明日にでも見舞いに行くよ。
……さて、そろそろ飯にするか。
腹が減っただろう?
テリー、料理を運ぶの手伝ってくれ。」
「うん!」
リュックの後をついていくテリーの姿は、まるでリュックの弟のようだった。
今まではカールの兄として、しっかりしなくてはならないと始終テリーは気を張っていたことだろう。
だが、気さくなリュックの前では彼も緊張を緩められるのかもしれない。
私にはそんな風に思えた。
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