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「これもいるな。
それと…これもだ。」
リュックは借りて来た荷車に、家の修繕に使う材料や食料を次々と載せていく。
私の思った通りだった。
彼はこういう時になると、本当に行動が素早い。
私はそれについていくのがやっとだが、以前程足手まといにならないようになっただけ、私も成長したということか…
「……なんだ、なんだ?
思い出し笑いなんかして…
何か良いことでもあったのか?」
私の笑みをリュックは目ざとくみつけた。
「……まぁな……」
「何だよ、一体、何があったんだ?」
興味を示すリュックに、私は曖昧に微笑んで誤魔化した。
「チェッ、教えないつもりだな!
ま、良いや。
その代わり、後で話したくなっても聞いてやらないからな!」
リュックは大袈裟に口をとがらせ、そっぽを向いた。
子供染みた態度を取る彼は、大人になったばかりの若い青年に見える。
誰が見ても、私やクロワよりずっと年若く人生経験の浅い若者に見えているはずだ。
いつも明るく元気な彼が、誰にも言えない秘密を抱えているなんて誰が思うだろう…
困った人を見る度に救いの手を差し伸べる彼に、私はその理由を見出そうとしたことがあった。
それが彼の奇異な人生に何か関係があるかと考えたのだ。
彼本来の性格なのかと思う事もあれば、やはり理由があるように思える時もある。
だが、いつしかそういうことを考えることもなくなった。
理由等どうでも良いことだと気付いたから…
ついつい、どんなことにも理由を探してしまうのは、きっと私の悪い癖なんだと思う。
リュックは自分で正しいと思う事を…いや、やりたいと思うこと…または出来ることをしているだけなのだ。
そこには、理由も見返りを求める気持ちもない。
だからこそ、リュックはいつもあんなにも清清しい顔でいられるのかもしれない。
「さて、と。
帰ったら忙しいぞ!
テリーが帰って来るまでに、出来るだけたくさん修理して驚かせてやりたいんだ!」
「よし、私も頑張るよ。
あ、リュック…ペンキは良いのか?」
「あ、そうだった!
マルタン、よく気付いたな!」
リュックは微笑み、私の背中を景気良く叩いた。
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