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「じゃ、行ってくるね!」

「あぁ、気をつけてな!」



テリーは無邪気な笑みを浮かべ、私達に手を振り駆け出して行った。
リュックの用意した朝食は、私達が持っていた缶詰やパンや果物だったのだが、そんなものにもテリーは顔を綻ばせた。
私が推測していた以上に、彼らの生活は逼迫したものだったのだろう。
台所にも食料らしきものはほとんどなかった。
野菜のくずやパンの耳、そして野草…
こんなものしか食べていないのでは、母親の病気が良くなるどころか、子供達もいつ倒れてもおかしくない状況だ。



「さて…と。
マルタン、診療所をまわって、それから買い物にでも行くか。」



リュックが何をしようとしているのか、だいたいの見当はつく。
破れたガラス窓、建付けの悪いドア、天井の染み…
リュックはきっとこの家のそういう所を修繕し、夜にはテリーにうまいものを食べさせてやろうと考えているのだろう。
リュックのおかげで私も以前に比べるとそういった作業が少しずつ出来るようになっていた。



「あぁ…そうだな。
カールがちゃんと言い付けられた仕事をこなしてるかも確かめなきゃいけないからな。」

リュックは私の軽口に失笑した。



「確認するまでもないさ。
あいつは間違いなくきちんとこなしてるだろうからな。」

「……君の言う通りだな。」







「あ、リュックさん、マルタンさん!」



病室の扉を開けると、カールはいつになく明るい声で私達を出迎えた。
クロワも、同じように微笑んでいる。
二人の微笑みは、きっと、良い事があった印なのだと予感させた。



「お母さんの容態はどうだ?」

「今朝ね…母さんが目を覚ましたんです。
ここに入院出来る事になったって知って、母さんすごく喜んでた…
頑張って必ず元気になるって約束してくれたんです。」

カールは目を輝かせてそう言った。



「そうか…そりゃあ、良かったな。
じゃあ、これからもちゃんとお母さんの世話をするんだぞ。
……クロワさん、こいつはちゃんと仕事をしてるかい?
サボったりしないようにちゃんと目を光らせておいてくれよ。
なんせ、治療費の代わりに働いてもらってるんだからな。」

そう言って、リュックはクロワに目配せを送る。



「大丈夫よ。
カールはとてもよくやってくれてるわ。」

優しく微笑むクロワに、カールも嬉しそうに微笑んだ。


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