13


「まだまだ来るぞ。
さ、温かいうちに食べるんだ。」

「で、でも……」

「でももへちまもあるか!
俺とマルタンだけじゃとても食べきられないほど注文しちまったんだからな。
さ、早く食べないと次の料理が来るぞ!」

リュックに急かされ、テリーはおそるおそる料理に手を着ける。



「う、うまい!」

テリーの顔に子供らしい無邪気な笑顔が浮かんだ。
兄の様子を見て、カールも同じように料理を口に運んだ。



「おいしい…卵なんて久し振りだね!」

二人は顔を見合わせ微笑むと、次の一口を口に運び、次第にその速度は速まって行った。







「どうだ?腹はいっぱいになったか?」

「うん…僕、もう食べられないよ。」

「俺もだ…」

二人は、お腹をさすりながら満足そうな声で答えた。



「そうか、良かったな。
じゃあ、そろそろ帰るか…」

「あ…リュックさん…」

立ちあがろうとしたリュックを、カールの声が引き止める。



「なんだ?カール。」

「あの…仕事のことなんですけど…
母さんはお蔭様で診療所に入れてもらえたから、僕、明日から働けます。」

「カール、何のことだ?
仕事って一体何なんだ?」

テリーは心配そうに弟の顔をのぞきこんだ。



「うん…実はね、僕、母さんを助けてもらうのにかかるお金を働いて返す事になってるんだ。
母さんの看病があるからどうしようって思ってたんだけど、母さんは診療所に入れてもらえた。
だから、僕、明日から働くんだ。」

「そんな…だっておまえはまだ子供だし力だって…
それならリュックさん、俺が働くよ。俺の方が力だってあるし…」

「おまえはすでに仕事があるんだろ?
それに、俺と約束をしたのはカールだ。
カールに働いてもらう。
カール、それで良いんだな?」

「はい。」

カールはまっすぐな目をしてリュックに頷いた。



「よし、それなら仕事のことを話そう。
子供のおまえにはちょっと大変な仕事かもしれないが、頑張ってやるんだぞ。
途中で投げ出したりは出来ないぞ。」

「わかってます。
僕、一生懸命頑張ります。」

「じゃあ、今からおまえを職場に連れて行こう。
さぁ、行くぞ!」

リュックは本当にカールに仕事をさせるつもりのようだ。
こんな子供に一体どんな仕事をさせようというのか…
普段からろくな食事をしていないであろう二人のことを考えて食事をさせるような心優しいリュックが、なぜカールにはそんなに厳しいことを言うのか、私にはさっぱりわけがわからなかった。


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