045 : 盗み聞きの値段1






「マルタン…ソフィーさん達は今頃どうしてるかなぁ?」

「……きっと、エリックさんと二人で幸せに暮らしてるだろうな。」

「……そうだよな…」



次の朝、私達は早々とクロワに起こされた。
どこか気の抜けた私達とは違い、クロワは少しも疲れた様子を見せず、今日こそは薬草を発見すると意気込んでいた。

手分けして探すことになったのを良い事に、私とリュックはクロワたちから離れた木陰に横になり、のんびりと流れ行く白い雲を眺めながら他愛ない会話を交わしていた。
心地良い風に頬を撫でられる度にまどろみを感じつつも、さすがに眠っては悪いと気を張っていたちょうどその時、クロワの声で私の眠気は吹き飛んだ。



「もうっ!やっぱり、こんな所でサボってたのね!」

クロワがわざと大袈裟に怒ったふりをしていることはわかったが、それでもめったに感情を顕わにしない彼女のその一言には気迫が感じられた。
リュックは、私以上に目を丸くして飛び起きる。



「ご、ごめん、ちょっと休んでただけなんだ。な、マルタン!」

「え?あ……あぁ、そうなんです。
ちょっと疲れたものでその……」

私達の様子に、クロワはどこか驚いたような顔をして、肩をすくめた。



「ごめんなさい。
まさか、二人共そんなに驚かれるとは思ってなくて…」

「いえ、私達こそ、気を抜きすぎていました。
……それで、薬草はみつかったんですか?」

クロワは残念そうな表情で首を振った。



「これほどみつからないなんて、どういうことかしら…
もうほとんど探したはずなのに…」

「こういう時は一休みするのが良いかもしれませんよ。
ここは良い風が吹いてますね。
ここで一休みしますか?」

クロワと一緒に行動しているクロードは、実際の所、疲れているようだ。
クロワの手前、サボるかけにはいかないし疲れたとも言い出しにくかったんだろう。
もしくはただ単に退屈しただけなのかもしれないが、とにかくクロードが休みたがっていることは間違いなかった。



「……なぁ、その前にちょっとあの場所へ行ってみないか?」

「あの場所……?」

リュックの不意の提案に、戸惑ったのはクロードだけだった。
私とクロワには、リュックの言う「あの場所」がどこなのかすぐに見当は付いた。


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