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エリックの葬儀は思ってもみない程、盛大なものとなった。
近所の者達だけでひっそりと執り行なわれるのだろうと考えていたのだが、噂のおかげで雪の街から葬儀に参列する者も少なくなく、エリックは大勢の人々に見送られることとなった。
そのことは予想外だったが、エリックもそんな状況に驚きながらもきっと喜んでいることだろう。
当然のことながら、エリックとソフィーは隣り合うすぐ近くに埋葬された。



「あら、リュックは?」

埋葬も終わり、弔問客もまばらになった頃、私達はリュックの姿が見えないことに気が付いた。



「さっきまでいたと思ったんですが…」

墓場を離れ、あたりを見渡していると、町とは反対側の方の道から走って来るリュックの姿が目に映った。



「リュック、それは…」

「へへっ、爺さんとソフィーさんの墓の傍に植えてやろうと思ってな。」

息を弾ませながら答えたリュックが持っていたのは、一本の苗木だった。
私達は墓場に戻り、その傍らにリュックが苗木を植樹した。



「リュック、まさかこの木は…」

「あぁ、そうさ、粉雪の木だ。
あ、勝手に持って来たわけじゃないぜ。
宿屋の爺さんに事情を話して分けてもらったんだ。
渋ってたけど、この木はどうせ雪の街じゃないと根付かないんだって言って最後には根負けして分けてくれた。
でもな……俺、きっとこの木はここに根付くと思うんだ。」

「もしかして…これは、ソフィーさんのいたあの傍の木なのか?」

「さすが、マルタン、よくわかってるな!
……粉雪の木の下の二人はとても幸せそうだった…
ここにあの木が生えたらきっと喜んでくれると思うんだ。
だから……きっと生えてくれるさ!」

そう言って、リュックは無邪気な微笑みを浮かべた。



「リュック、ここにいたの?
あら、なにを植えたの?
……これは、もしかしたら…」

クロワは、少し驚いたような顔でリュックをみつめる。



「クロワさん、この木はちゃんと許可を得て宿屋のご主人からもらってきたそうですよ。」

「……そうだったんですか。
ごめんなさい。
あなたの事だから、勝手に取って来たのかと思って…」

「酷いな、クロワさん。
俺のこと、一体どんな風に思ってんだよ。」

クロワは肩をすくめて笑い、その場にしゃがみこみしみじみと苗木をみつめた。



「ソフィーさんは粉雪の木が大好きだったらしいから、きっとこの木は根付くわね。」

クロワは、そう言って小さく微笑む。


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