13
*
「ソフィー…!
やっと会えた…
長い間、一人にして済まなかった…!」
柩に取りすがり、エリックは声を上げて泣いた。
何十年もの年月が経ち、二人の姿はすっかり変わり果ててしまったがエリックの愛情は少しも色褪せていないことを知り、私の胸は熱くなった。
エリックは、結婚指輪を再びソフィーの指に差し込んだ。
骨だけになったソフィーの指で留まることも出来ない金の指輪がさらに皆の涙を誘う。
エリックは、これまでソフィーをみつけだせなかったことへの謝罪の言葉を述べ続け、いつまで経ってもその場を離れようとしない。
そんなエリックを、神父達が言い聞かせ、ようやく上の階へ上がったのはもう夜もどっぷりと更けた頃だった。
「エリックさんとタバサさんには今夜は教会へ泊まっていただきましょう。
ね、エリックさん、それなら良いですよね?」
老人は泣き腫らした赤い目をして、黙ったままで頷いた。
「じゃあ、俺達はまた明日来るよ。
爺さん、今日はいろいろあって疲れただろう?
ゆっくり休むんだぜ。」
「ありがとう…本当にどうもありがとう…
あんたらのおかげだよ。
本当にありがとう…」
エリックは、リュックの手を強く握り締め、何度も何度も頭を下げた。
*
「リュック、マルタンさん、一体どうしたの?
こんなに遅くまで…」
「クロワさん、こんな遅くまで起きててくれたのか。
……実はな…みつかったんだ…
あの女性の会いたがってた人が…」
「え?」
「今夜は遅いから、詳しい話はまた明日するよ。」
クロワとしてはすぐにでも話を聞きたいところだったろうが、私達は本当に疲れていた。
リュックは隣町からエリックをずっとおぶってきたのだから、きっと私よりも疲れたことだろう。
途中で変わろうと言っても、彼はそうはしなかった。
そういえば、私達は朝食べて以来、お茶しか飲んでいなかったことにも気が付いたが、もう今更なにかを食べたいという気持ちもわかなかった。
疲れては感じていても、眠いという気持ちにもならなかったのは、今日のことで神経が高ぶっていたからだろう。
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