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「私は、雪の街どころかその先の街までも川を伝って探しに行ったのに、どうしてみつけられなかったんだろうな…」

「あの場所は川岸からけっこう離れてるし、ちょうどあたりには粉雪の木が群生してるからそれに紛れてわからなかったのかもしれないな。」

「そうか…そんなに川岸から離れておったのか…
……でも、本当に良かった。
あんた方にはなんとお礼を言ったら良いのかわからん程、感謝している…」

老人はそう言うと、私とリュックの手を取って順番に握り締めた。







「爺さん、あんた、若い頃はもしかして黒い巻き毛じゃなかったか?」

「そうしてそんなことがわかるんだい?」

エリックの髪は今は真っ白で、頭の輪郭に沿ってこびりつくように短く刈りこまれている。



「やっぱり、そうか…
それじゃ、ソフィーさんは肩くらいの栗色の髪の毛で、色白の美人だよな…
なぁ、爺さん、白いドレスに覚えはないか?
胸と袖に刺繍が…多分花と蔦みたいな刺繍が入ってるんだ。」

「あんたは一体…」

「爺さん…俺、実はその人のことを夢に見たんだ。」

エリックを背負いながら、リュックは夢の話を話し始めた。
エリックはたいそう高齢のため、足もおぼつかない。
ここ数年は、車椅子でたまに近所を散歩する程度の外出しかしていないということだったが、エリックはすぐさま雪の街に行きたいと言い出した。
柩をすぐにこちらに運んで来ると言い聞かせたが、エリックはそれを聞き入れず、それならば…と、リュックが背負っていくことを提案したのだ。



「なんと…そんなことがあったのか…
世の中には信じられないことがあるものだ…
白いドレスは、私がソフィーに着せたものだ。
本当ならウエディングドレスを着せてやりたかったんだが、それは皆に反対された。
だから、あのドレスを着せたんだよ。
……私も実は今朝、不思議な夢を見たんだ。
最近は夢自体ほとんど見てはいなかった。
だけど、今朝、私は久し振りにソフィーの夢を見た。
ソフィーは私の方に手を差し伸ばし、とても嬉しそうな顔をしていた。
私は、彼女が迎えに来たんだと思っていたんだが、そうではなかったんだな…
柩がみつかったことを私に知らせに来たんだろうな。」

「きっとそうだろう。
爺さんはこれからももっと長生きしなくちゃタバサさんが悲しむぜ!」

「……そうだな…」

リュックの背中で、エリックが幸せそうに微笑んだ。


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