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「これが柩の土砂の中からみつかったそうなんです。」
「これは……マリッジリングでしょうか?」
「おそらく、そうでしょう。
ほら、ここに刻印があります。」
神父の繊細な指先には、目をこらして見ると「E to S」 と、刻まれているように見える刻印があった。
「……エリック……
……そうだ!エリックだ!
彼女が会いたがってるのはエリックさんなんだ!」
突然大きな声をあげたリュックを、神父は驚いたような顔でみつめた。
「……そうですね。
Eですから、エリックさんということもあるでしょうね。
……どなたか、お身内の方にご連絡が取れれば良いのですが…」
リュックは、おそらく夢の中の様子を思い出したのだと思う。
彼女が会いたいと訴える、どうしても聞き取れなかった相手の名前が不意にリュックの頭の中にひらめいたのだと感じた。
神父はもちろんそんなことは考えてもいないはずだ。
リュックが、ただあてずっぽうに言っただけだと思ったに違いない。
そんな最中、誰かが階段を降りて来る足音が静かな霊安室に響いた。
扉を開けて入って来たのは、先程の神父とどこか見覚えのある男性だった。
「あ、あんたらは昨日の…!」
そう声をかけられた瞬間、私はその男性のことを思い出した。
名前までは知らないが、確か、昨日、自警団の詰め所にいた男だと。
「どうしたんだ?なにかあったのか?」
「あぁ、実は、あの遺体に思い当たる人物がいるっていう人が自警団にやってきてな。
団長が留守なんで、もしかしたらここじゃないかと思って来たんだけど、ここにはいないようだな。」
「お、おいっ!その話、もっと詳しく聞かせてくれよ!」
その人物は、今、詰め所にいるとのことだったので、私達は話を聞くために男と一緒に詰め所へ急いだ。
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