「それにしても、マルタン…なんであの場所に柩があることがわかったんだ?」

部屋に戻るなり、リュックが私にそんな質問をなげかけ、私はそれに対してゆっくりと首を振った。



「私にもまるでわからない。
柩があるなんてことも、もちろんわかってたわけじゃない。
ただ……急にそこを掘らないといけない気分になっただけなんだ。」

私はあるがままを言葉にした。
説明にはなっていないかもしれないが、私にはそうとしか答えられなかったのだ。



「そうか…
なんとなくわかるような気がするよ。
あの時、俺の涙が止まらなくなったのも、きっと彼女が何かを知らせてたんだろうな。
あのまま、あんたがあの柩に気付かなければ、俺達はあそこから帰ってたはずだ。
……本当にありがとう。」

「いや、そうじゃないさ。
ここまで辿り着けたのは、君のおかげだ。
きっと彼女も喜んでいると思う。
後は、彼女が会いたがってる相手を探すだけだが…やっぱりみつかるまで君はこの街に留まるつもりか?」

リュックは、頬杖を着いて一呼吸入れた。



「出来ればそうしたいんだが……かなり昔のことみたいだし、この街じゃあの女性に関係ありそうな事件はないみたいだからな…
みつけるのは相当難しそうだよなぁ…
でも、出来る限りのことはしたいと思ってる。」

「私も同じ気持ちだよ。
…そうだ!リュック、君は女性の服装や顔を見たんだろう?
その特徴を言ってみたらどうだろう?
何かの手掛かりになるんじゃないか?」

「あの女性を夢で見たとか、木の下で見た事を言うのか?」

「あぁ…そうだな…
やっぱり、そんなことは言えないか…」

私はうっかりと忘れていた。
世の中にはクロードのようにこういった類の話を全く信じない者も多いということを…
信じてもらえないだけならまだしも、場合によっては厄介なことにもなりかねない。
たとえば、今回のことがなんらかの事件に関わるものだったとしたら、犯人だと疑われることだってあるかもしれない。
ただ、今回の場合は、リュックの見た目の年齢からしてそう思われることはないだろうが、それにしたってなんらかの関わりを疑われるかもしれないのだ。
では、どうすれば良いのか?
良い案の一つも浮かばないまま、私達は眠りに就いた。


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