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「マルタン、どうだった!?」

次の朝、私が目を開けた瞬間に、すでに起きていたリュックが待ち構えていたように声をかけた。



「あ…それが、昨夜は何も見なかった…」

私はまだはっきりしない頭で、リュックにそう答えた。
意外なことに、昨夜は本当に全く夢の記憶がなかったのだ。
もしかしたら、昨日の山歩きで疲れて熟睡し過ぎていたのかもしれない。



「そうか…俺は見た。
ほとんど、前の日と同じ夢だった…
ただ……」

「なんだ?」

「あの景色は、裏山じゃないかって気もするんだ。」

「裏山?
それは、昨日、裏山に行ったからじゃないか?」

「……そうだな。
そうなのかもしれない。
でも、やっぱり少し気になるんだ。
今日もまた、裏山の方に行ってみて良いか?」

「あぁ、それは構わないが…」



私達は、クロワの薬草を探しを手伝うという名目で、朝食を食べ終えるとすぐに裏山に向かった。
宿の老人も散歩がてらに一緒に行くと言い出し、私達は昨日と同じメンバーで山に入り、
クロワとクロード、そして私、リュック、老人の三人で二手に分かれ、思い思いに山の中を探す事になった。
私にはそもそもどれが珍しい薬草なのかもわからない。
リュックと老人はそれなりに知ってはいるようだが、リュックにはそんなものを探す気は端からなかった。



「リュック、ここで何をするつもりなんだ?
夢で見たのと同じ場所を探すつもりなのか?」

「別に、そういうわけじゃないんだけどな…
俺にもよくわからないんだけど…とにかく、ここへ来てみたくなったんだ。」

私はリュックの言葉に黙って頷く。
おそらく、それは直感のようなもので、論理的に説明出来るようなことではないのだろう。
リュックがここへ来たいと感じた事こそが、きっと最も重要なことなのだ。
私は、この先、なにかが起こりそうな予感めいたものを感じていた。
それも、もちろん、何の根拠もないものだ。


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