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「なぁ、マルタン、どう思う?
あの爺さんは嘘を吐いてるように感じたか?」

リュックはベッドに寝っ転がり、ぼんやりと天井をみつめたままで私にそう尋ねた。



「いや、そんな風には思わなかった。
本当にこの街には事件らしきものはなかったのかもしれないな。」

「じゃあ、どういうことなんだ?
なんで、俺達は、あの女の人がこの街にいる夢を見たんだ?」

「それは……わからん…」

「あ〜あ、こんなもやもやした気持ちで旅立つのはいやだが…でも、もしかしたら、この先の街で手掛かりがみつかるってこともあるかもしれない。
ま、なりゆきに流されてみるしかないか。」

「そうだな…」

考えてみれば、以前の夢の女性もローズの島に渡ってから符合したのだ。
今回も、リュックの言う通り、この先の町でなにか展開があるのかもしれないと私も考えた。
しかし、そうではなかったようだ。







「本当に良いんですか?」

「あぁ、俺達は別に構わないぜ。
な、マルタン!」

「ええ、全然構いませんよ。」

クロワとクロードは、私達が予想した通り、陽が暮れた頃にようやく戻って来た。
もちろん、かごにいっぱいの薬草を背負って。
そして、クロワは夕食の席で、もうしばらくこの街にいたいと言い出したのだ。
質の良い薬草があくさんあったという事に加え、例の薬師が口止めまでしている程の珍しい薬草がみつからなかったというのだ。
クロワとしては、なんとしてもその薬草をみつけたいと考えているようだ。
ついでに、久し振りに薬を作りたい衝動にもかられたのだと思う。
私達にそれを反対する理由は何もない。
それだけではなく、おそらく、私達はあの夢の女性に足止めされたのだろうと思えた。
すなわち、それは、あの女性がこの街に関わりがあるということではないだろうか…
クロワは裏山の薬草のことを楽しそうに話し、クロードは朝から日暮れまでの山歩きに疲れたのか、あくびを噛み殺しながらもクロワの話を聞き入っていた。
男女の関係というのは本当に不思議なものだ。
何に対しても積極的で口もたつあのクロードが、クロワに対しては自分の主張ということをまるでしない。
彼があれほど素直にいうことを聞くのは、クロワに対してだけではないだろうか。
そんなことを考えると、私はどこかおかしく思え、こみあがる笑いをじっと堪えた。


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