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「ところで、爺さん、おかしなことを聞くが…この町で何か変わったことはなかったか?」

「変わったこと…?どんなことじゃ?」

「う〜ん…たとえば、人が殺されたことがあったとか……何か事件や事故みたいなものだな。」

「殺人事件じゃと!?
この街は平和な街じゃ。
そりゃあ、まぁ、酔った者同士の喧嘩くらいはあったが、死人が出たことなんぞ一度もない。」

老人は、きっぱりとした口調でそう言うと大きく首を振った。



「そうか〜…じゃあ、大きな事故なんかもなかったか?」

「ないな。
……あ、昔、一度だけとても大きな台風はあったぞ。
あの時は潰れた家もあったくらいでな。」

「死人は出たのか?」

老人は、怪訝な表情をリュックに向けた。



「なんじゃ、あんた、さっきから死人、死人って…おかしなことを聞くのう。」

「い、いや、その台風のことは隣町でも聞いたけど、そんな大きな台風なら死人も出たんじゃないかってふとそんなことを思っただけだ。」

老人の視線を避けながら、リュックはそう言うと、水筒のお茶をぐいっと飲んだ。



「……そういえば、確か、飛んできた屋根だったかなんだったかで頭を打って大怪我をした人がいたが…
あれは、雑貨屋のおやじだったかいのう…
だが、死にはせんじゃったぞ。」

「そ、そうか、それは良かったな。
……あ、爺さん、山菜は夕飯に使うんだろ?
そろそろ運んだ方が良いんじゃないか?」

「まぁ…そんなに急ぐこともないが…
そういえば、クロワさんとか言ったか、あの人ともう一人は放っておいて良いのか?」

「クロワさんはどうせ陽が暮れるまでやめないだろうから、好きにさせてやれば良いんだ。
先生も一緒だし、心配はいらないよ。」

「そういえば、あんたらはあの人を先生と呼んでるようじゃが、あの人は何の先生なんだね?」

「あぁ、あの人は医者だよ。」

「そうか、医者か…」

老人は感心したように何度か頷き、その間にリュックはいっぱいになったかごを背中に背負った。



「さ、帰ろうぜ。」


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