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「まぁ……!」
「なんだ、これは…!」
ほどなくして辿り着いた街の光景に、私達は圧倒されてしまった。
まさに、そこは噂通りの雪の街だったのだ。
クロードの予想したように街の名前に雪が付くわけではなく、街の至る所が白い雪に覆われていたのだ。
だが、それは本物の雪ではなく、白い小さな花だ。
木を覆う小さな花が、木の周囲だけではなく風に飛ばされてあちらこちらを白く塗り替えている。
それがさながら雪が積もってるように見えるのだ。
「こりゃあ、まさに雪の街だな。」
「こんな木、私見た事ないわ。
この甘い香りもあの花の香りなのかしら?」
クロワはそう言いながらゆっくりと木の傍に近付いていく。
「見事なもんじゃろ?」
「え?ええ…本当に綺麗ですね。」
木の傍で一人の老人がクロワに話しかけた。
私達もその場に合流し、老人からこの木についての話を聞いた。
この街には古くからこの木があり、それがどういう経緯で根付いたのかはいまだにわからないということだった。
奇妙なことに、このあたりでもこの木があるのはここだけだそうで、それを考えると誰かが遠い国から持ちかえった苗を植えたのではないかと考えられる。
一年中花を付けるこの木の正式な名前は今もわからず、このあたりでは「粉雪の木」と呼ばれているのだそうだ。
「元々、この木は裏山にあったんもんなんじゃが、それを誰かが街の中に植えたんじゃな。
長い時をかけ、いつの間にか街の中にもこの木がたくさん増えていた。
わしが子供の頃にはまだこんなにはなかったし、ここが雪の街だとも呼ばれておらんかった。
そもそもここは昔はこれほど大きな町ではなかったんじゃ。
この町が栄えたのも粉雪の木のおかげかもしれん。
この木はとてもええ香りがするじゃろ?
これは、気分を晴れやかにしたりよく眠れる効果もあるらしいぞ。
そのせいか、観光で来る者も多いんじゃよ。
あんたらは……観光ではなさそうじゃな?」
老人は私達の姿をじろじろとみつめ、そう言った。
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