「イングリット、ただいま!」

久し振りに見たイングリットの顔は、幾分元気を取り戻したようにマーチンには思えた。



「大丈夫だった?
何か変わったことは?」

イングリットは首を振り、いつものようにメモに何事かを書き、マーチンの前に差し出した。



『ありがとう。
私なら元気よ。
それより、ビルの手掛かりはなにかみつかった?』

マーチンの表情に影が差し、その首をゆっくりと振った。



「……残念だけど、何も……すまなかった。
……イングリット…実は、今、すごくお腹がすいてるんだ。
家には何もないし、今日はご馳走してもらえないかな?」

イングリットは頷き、マーチンを家の中に招き入れた。







「ご馳走様。
とてもおいしかったよ。
急に無理を言ってすまなかったね。」

イングリットは微笑みながら、小さく手を振った。



「明日まで休みなんだ。
良かったら…庭の手入れの続きでもやろうか?」

イングリットは、少しの間を置いてゆっくりと頷く。



「ビルの日記に庭の手入れのことが書いてあったね。
あの通りにやろう。」

イングリットは再び頷いた。



「じゃあ、おやすみ、イングリット。」

帰ろうとしたマーチンの目の前に、イングリットは白い封筒に入った手紙を差し出す。
表に「マーチンへ」と書いてあるその封筒は、かなりの厚みを持っていた。



「これは…?」

イングリットは『家に帰ってから読んで』と書かれたメモを差し出す。



「わかったよ。
じゃあ、おやすみ。」


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