「あんたもずいぶんと物好きだな。」

そこにいたのは、若い男の二人連れだった。
二人は、感じの悪い薄ら笑いを浮かべ、イングリットのことをじろじろとみつめた。



「あなた方には関係のないことです。」

「気の強い女だな。」

背を向けたイングリットに、男の声が飛んだ。



「良いか、あんたは余所者だから知らないだろうが、あいつのことを相手する物好きなんてほとんどいないんだ。
特に女はな。
あいつは、あの顔のせいで実の親にも捨てられたって話だぜ。
あいつを拾ったバーグマンっていうのも変わった夫婦でな。
信仰深くて、教会で祈るのが趣味みたいな夫婦だった。」

「ま、家が元々の金持ちだから、あくせく働く事もなく暇だったんだろうな。
あいつを拾ったのもきっと珍しいペットを飼うようなつもりだったんじゃないか?」

二人は、そう言うと声を上げて笑った。



「あなた方は……!」

イングリットは振り返り、二人の頬を打ちたくなる衝動を必死に抑えながら、上ずった声で叫んだ。



「よくもそんな酷いことが言えたものね!」

「そうか…わかった!
あんたは、あいつの家の財産を狙ってるんだな?」

「確かに奴の家は金持ちだが、殺されたんじゃ元も子もないってもんだぜ。」

二人は、顔を見合せて皮肉な笑みを浮かべる。
イングリットはその笑みの意味を瞬時に悟った。



「ビルは犯人なんかじゃないわ!!」

「それはどうかな…?
あの事件が起きたのは、あんたがこの町に来てからだ。
あいつは、生まれて初めてあんたという女に優しくされてむらむらして…男の本能が目覚めたんだ。
そして、その衝動を抑えきれずに少女を汚して殺したんだってもっぱらの話だぜ!」

「ば、馬鹿なことを言わないで!
ビルは、そんなことする人じゃないわ!」

激しい怒りのために、イングリットの身体は小刻みに震えた。



「良いか?あいつはな、事件があった日、あの町にいたんだぞ!
一応、犯人は捕まったが、そいつは本当の犯人じゃないって話だ。
なんせ、その男が留置場にいた間に、隣町でまた同じような事件が起こったんだからな!
じきに奴は捕まる!」

「そんなこと…絶対にないわ!!」

ビルが犯人だと決めつけたような男の強い口調に、イングリットはいたたまれず、屋敷の中に駆けこんだ。


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