その後は、今までとは立場が変わり、ピーターが私達に様々な質問を投げかけた。
トーマスのことや、自分が記憶を失ってる間の出来事を知らされる度に、彼の表情はめまぐるしく変化した。
元々の彼は、どこにでもいるごく普通の十八歳の少年だったのだ。
何が原因で彼があんな状態になったのかはわからないが、きっと、これからはもうあんなことにはならないだろう。
この奇妙な体験も、彼には特に悪い影響は与えないのではないかと思える。
ピーターが記憶していなくとも、この間、彼は愛情に満ちた生活をしていたのだから。



「それで、ピーター、これからどうするんだ?
故郷に帰るのか?それとも、まだ旅を続けるのか?」

「リュックさん、まだそんな先のことは…」

「そのことなんだけど…」

ブランドンの声にピーターの声が重なった。



「……もし、良かったら、しばらくここで働かせてもらえないかな?」

遠慮がちに発せられたピーターの言葉に、皆、同様に驚いたような表情を浮かべた。



「それは構いませんが…いえ、こちらとしては助かりますが…」

「俺…今までみんなに迷惑かけてたんだろ?
恩返しなんてたいそうなもんじゃないけど…
それに、俺はろくに働いたこともないからたいして役には立たないかもしれないけど……でも、少しでも、なにかさせてもらえたらと思って…」

「そうか、そりゃあ良い心がけだ!
爺さんもきっと喜ぶぜ!」

リュックは、頷きながらピーターの肩を叩いた。
リュックの一存で決められることではないが、ブランドンやシスターキャロルもそのことを承諾していることは彼らの顔を見れば明らかだ。



「ピーター、おまえ、ペンキは塗れるか?」

「ペンキ塗りならしばらくやったことがある。
……とはいっても、半年くらいだけどな。」

「よし!それじゃあ、明日からペンキを塗るぞ!」

「リュックさん、いくらなんでもピーターはまだ記憶が戻ったばかりですよ。」

「シスターキャロル、大丈夫さ!
もし、なにかあってもここには先生もいるんだ。
それに、最近のピーターは体調もとても良くなってたじゃないか。
な、ピーター、やれるよな!」

ピーターは嬉しそうに微笑み、そのまま深く頷いた。


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