やがて、慌しく時は過ぎ、トーマスの葬儀が執り行なわれた。
彼は、町外れの共同墓地に葬られることになった。
喪服を着せられたピーターは、わけもわからずシスターキャロルに手を引かれるままに葬儀に参列した。



「さぁ、ピーター。
トーマスさんにお別れをしましょうね。」

すすり泣きが聞こえる中、白い花を手にしたピーターがトーマスの柩に近付いた。
柩の中のトーマスをみつめるピーターの表情が突然強張ったものに変わり、その身体ががたがたと震え始めた。



「……ピーター……どうしたの?」

ピーターは、お昼の鐘を鳴らすことは続けていたが、特に彼の症状に変化があったとか、良くなっているということはなかった。
トーマスの死も、当然、彼には理解出来ないものと思っていたが、ピーターの様子は明らかにおかしかったのだ。
トーマスが死んだ事を理解出来ていないにしても、何かを感じとっているように見えた。



「ピーター、どうしたんだ?」

リュックが声をかけた時、ピーターは突然大きな声を上げ、暴れ出した。



「ピーター、落ちつけ!
落ちつくんだ!!」

リュックがピーターの両腕を掴んで抑え込んだが、ピーターの叫び声は止まらなかった。
彼は、泣いていた…
泣きながら、言葉にならない声を張り上げ叫んでいた。



「ピーター、大丈夫よ。
大丈夫だから、落ちついて!」

シスターキャロルはピーターの傍で盛んに声をかけるがピーターは狂ったように泣き叫び続けた。
クロードは診察カバンを取りに戻った。
おそらく鎮静剤でも打つつもりなのだろう。
子供達はピーターを見て怯え、泣き出す者もいたため、クロワと職員達で孤児院へ誘導を始めた。
そのうち、ピーターは突然大きく背中をそらし、それと同時に叫び声が止まった。
彼は、意識を失ったらしく、リュックが掴まえていなければその場に倒れ込んでいただろう。
頬を叩いてもピーターの意識は戻らない。
リュックが彼を背負って孤児院へ走り、墓地には私と数人の職員が残り、神父と共にトーマスの旅立ちを見送った。


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