リュックが中心となり、私や他の職員がそれを手伝い、水車小屋は着々と完成に近付いていった。
意外なことに、地下に資材を降ろすのが最も骨の折れる作業だった。
長くて薄暗い階段を、重い荷物を抱えて降りるのだ。
ほんの少しの失敗が大事故に繋がる…そんな緊張感から気疲れしたのかもしれない。

指示するだけでは物足りなくなったのか、トーマスも時々作業に加わった。
一度作業に取りかかると、彼は休むのも忘れたかのようにその作業に没頭する。
図面引きの仕事の後だったせいか、彼は作業の途中で倒れることもあった。
そんな時、彼は安静を言いつけられているにも関わらず、シスター達の目を盗んでは作業場にやって来て、その片隅で嬉しそうに微笑みながら私達を見守っているのだった。







「どうにかこうにか、ここまで来れたな!
あと一息で完成だ!
爺さん、外側には色は塗るのか?」

「それなんじゃが…いまだに迷っておってな。
地下に似合う地味な色合いにしたものか、それともこの薄暗い地下をぱっと明るくするような色合いにしたものか…
リュックさん、あんたならどんな色を塗るかね?」

二人は、一歩引いた所から水車小屋をみつめ、側面の色について思いをめぐらせていた。



「そうだなぁ…
ここは確かに薄暗い…でも、逆に言うと静かで落ちつく場所でもあるよな。
この雰囲気をぶち壊しにするのもなんだが、これが完成したら、今よりずっと頻繁に人が出入りするようになる。
だったら、明るい色の方が良いかなって気もするんだ。
なぁ、マルタン、あんたはどう思う?」

「えっ…?」

不意にリュックに質問を投げかけられ、私は咄嗟には言葉が返せなかった。
まさにリュックやトーマスの言う通り、どちらの案もが良いと思えた。
自分を主張し過ぎない水車小屋があれば、ここは穏やかな場所のままでいられそうだし、逆に、明るい華やかな水車小屋ならばこの場所は今までとは違った場所に生まれ変わる。
そのどちらもが魅力的に思え、私は腕組みをしたまま首を捻るばかりだった。


- 153 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お題小説トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -