トーマス老人に水車小屋のことを話すとたいそう喜び、それから彼は寝る間も惜しんで設計に没頭した。
ピーターのことは相変わらず気にはしていたが、彼と接している時でさえ、何かメモを書き留めている様子を私は何度か見掛けた。
始終、水車小屋のことが頭から離れないようだ。
一度は、ほぼ完成した図面に気に入らない部分があったとかでそれを引き裂き、彼はまた新たに図面を引き始めた。
正直言って、誰もがそれほど水車小屋に期待を寄せているわけではない。
そのことは、トーマス老人も薄々気付いてはいるのだろうが、彼はその設計に全力を傾け、やがて、設計図は完成した。







「爺さん、あんた、たいしたもんだな。
こりゃあ、俺も相当気合い入れて作らなきゃならないな。」

リュックは出来あがった設計図にじっくりと目を通し、感心しきっていた。



「もっと簡単なものでも良かったのでしょうが…久しぶりの仕事だけについつい嬉しくて…
気が付いたらこんな風になってたんです。」

トーマス老人は満足げに微笑みながらそう言った。



「そうか、俺もこんなしっかりした図面通りに小屋を建てるのは初めてだからちょっと心配はあるけど、その分、やりがいもあるってもんだよな。
細かい部品もあるようだから、材料を揃えるのもこりゃあ大変だな。
マルタン、買い出しにはつきあってくれよな。」

「あぁ、もちろんだとも。」



次の日から私とリュックは材料の買い出しに出掛け、ついに本格的な水車小屋作りが始まった。


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