彼の設計の腕がどの程度のものかはわからないが、今の孤児院には特に必要な建物はないように思えた。
彼がもっと若く技術面での作業が出来れば、リュックと一緒にあちこちの補修等で役に立つのだが…
何かないものだろうかとふと視線を移した先に、広い小麦畑が映った。
今はまだ青々としているあの小麦達も、あと数ヶ月もしたら黄金色に色付くことだろう。
そんなことを考えているうちに、私の脳裏にあるアイディアが浮かんだ。







「なんですって!
地下に水車小屋を…?」

その日の夕食の席で、私は、昼間思いついたアイディアを皆に話した。



「そうです。
地下の水路を利用して、あの場所に小さな水車小屋を作り、それで小麦を挽いてはどうかと考えたのです。」

皆、私の提案をどこか呆れたような顔つきで聞いていた。



「しかし、水路はそんなに勢いのある流れじゃないぜ。
あんなので水車が動かせるのか?」

誰もが一番気になってたであろう質問をリュックが口にした。



「それなら、大丈夫です。
トーマスさんに現場をみてもらいましたから。
水の流れを工夫すれば、なんとか出来るようです。」

「トーマス爺さんが?
どういうことなんだ?」

「実は…」

私は、トーマスがもっと仕事をしたがっていることや、彼が以前、設計の仕事をしていたことなどを話した。



「そうだったんですか…
じゃあ、やってみましょう!
小麦が水車でひけるようになったら、その分他の仕事が出来るわけですから助かります。」

事情を知ったブランドンは、私の提案に賛成してくれた。
結局、反対する者はなく、屋敷の地下に水車小屋が作られることに決まった。


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