あれから瞬く間に一週間が過ぎた。
ピーターの症状に特別大きな変化が起こったわけではなかったが、小さな変化はあちこちに見受けられるようになった。

まず、彼はよく眠りよく食べるようになった。
今までは座ったまま壁にもたれるようにして眠っていた彼が、横になって眠るようになったのだ。
いまだ一人で食べることはしないが、食べる量が今までより明らかに増えた。
ちょっと目を話すと、せっかく育っていた野菜の苗まで引っこ抜いていることもあったが、彼は言われたことをとにかく真面目にこなしていた。




「まぁまぁ、ピーター、今日は特別たくさん採れたわね。」

夕方になり、シスター・キャロルがピーターの元を訪ねた。



「こいつ、本当によく頑張るんだ。
頑張り過ぎて、人参も三本ほど引っこ抜かれたけどな。」

そう言いながら、リュックは引き抜かれた人参を両手に持っておどけて見せた。



「まぁ、リュックさんったら。」

彼のおかしな動作にシスター・キャロルが笑い、次の瞬間、その表情が固まった。
シスター・キャロルの視線の先で、ピーターが微笑んでいたからだ。
今まで何の感情も見せなかった彼が、微笑んでいるのだ。



「ピーター!」

シスター・キャロルは、ピーターに駆け寄りその身体を抱き締めた。



「ど、どうしたんだ?!」

ピーターの横にいたリュックにはその意味がわからず、シスター・キャロルの突然の行動にただ戸惑うばかりだった。
ピーターは、シスター・キャロルの腕の中で心地良さげな笑みを浮かべじっとしている。



「リュック!」

私はリュックに声をかけ、少し離れた場所に彼を呼び出し、今の出来事を話して聞かせた。



「そうだったのか…
ピーターが…」

リュックはピーターの方をみつめながら、何度も頷いた。



「良かったな…
奴はきっと良くなる…
シスター・キャロルの試した方法は正解だったってことだな!」

「そうだな…
ピーターは君の言う通り、きっと良くなるさ。」

私達は、シスター・キャロルに手を引かれ、部屋に戻るピーターの後ろ姿をみつめながら、静かに微笑んだ。


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