031 : 操り人形師1
「あいつの仕業か……」
次の朝、花に水をやろうと外に出た私の目に映ったものは、無残にも踏みつけられた花々の姿だった。
残念ながら、どの花ももう助けることは出来ない程、ひどく踏みつけられている。
こんな所にわざわざ来て、こんな酷いことをする者がいるとは思えない。
昨夜の腹いせにあいつがやったのだ。
何ともいやな言えない気分を感じながら、私は花を片付け、老人の家を出た。
起きた出来事を正直に話して…もちろん、犯人のことは言えないが、また新たに花の苗か種を買い付けて来ることにした。
*
「まぁ、マルタンさん!
どうかなさったんですか?」
「こんばんは、シスター・キャロル。」
孤児院に着いた頃には、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
ランプを持っていなかったので急いで歩いて来たつもりだったが、やはり老人の家からここまではかなり遠い。
数日ぶりに出会ったキャロルは、私が老人の家で花の水遣りのために留守番をしていることを聞かされていたのだろう。
その私が突然現れたことで、驚いているようだった。
「マルタン!どうしたんだ!?」
ちょうどその時、リュックがひょっこりと顔を出し、キャロルと同じように驚いていた。
「あぁ…ちょっとトラブルが起こってな…」
「トラブルって、何があったんだ?」
「まぁまぁ、リュックさん、マルタンさんも着いたばかりでお疲れでしょう。
向こうでお茶でもいただきながらゆっくり話しましょう。」
子供達はもう各部屋に戻り、床に就いていたせいか、孤児院の中はとても静かだった。
居間に向かうと、そこにはクロードと職員らしき者の姿があった。
「マルタンさん!どうしてここへ?」
居間に入った途端、私は再び同じ質問を受けた。
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