030 : ひとつ屋根の下1






「ピーター、夕飯の時間じゃよ。」

老人はピーターの傍らに腰を降ろすと、皿の中のものをスプーンで運び食べさせる。
老人は、毎日、毎日、こうして三度の食事を与え、時にはその身体を拭き清め、長く伸びた髪の毛を櫛ですいた。



「ピーター、この前植えたひまわりの花がやっと芽を出したぞ。」

「ピーター、このところは雨ばっかりでいやになるのぅ…」

「ピーター、今日は寒いから風邪をひかんようにな。」

老人は、食事の度にピーターに話しかける。
しかし、ピーターは何も答えず、その瞳には何も映してはいないようだった。
ピーターがこの場所に来た当時は、老人の言葉に答えることもたまにはあったが、月日の流れと共にピーターは何に対しても反応しなくなっていた。
まるで生きている人形のようなピーターに、老人はそれでもなお毎日話しかけ世話をする。
いつしか、それは老人の生き甲斐になっていた。
身寄りもなく一人ぼっちで生きて来た寂しい老人がこの人形のような少年に感じた同情心は、いつしか深い愛情に変わっていたのだ。
この少年のためにも生きなければならないと思う気持ちが、老人の心の支えにもなっていた。



「ピーター、朝食が出来たよ。
今日もとても良いお天気じゃよ。
おまえも外に出られたら良いのにな…
そしたら、わしの育てた花も見してやれるのに…」

老人はそう呟きながら、今日もまたピーターの口に料理を運ぶ。


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