「誰じゃな?」

まだ夜が明けたばかりの早い朝、老人が扉を開けると、そこに立っていたのはまだ大人になりきっていないような年頃の男だった。



「なんだね?」

「……僕を…僕を牢屋に入れて下さい…」

「牢屋に?
あんた、何を言ってるんだ?
ここは牢屋ではない。
ここはわしの家なんじゃ。」

「…僕を牢屋に入れて下さい…」

少年は虚ろな目をしてそう繰り返す。



「な、何なんじゃ…?
ここは牢屋ではないと言っただろう?
嘘だと思うなら中を見たらええ!」

少年は老人の家の中に入り、何かを探すように部屋のあちこちを見ていたが、やがて黙って出て行った。



「なんじゃ?おかしな奴じゃのう…」







次の日の夕刻になって、再びあの少年が老人の元を訪ねた。



「またおまえさんか…
何なんじゃ、それは…」

少年は、どこで集めて来たのか、流木のようなものを何本も持っていた。



「お、おい!
何をする気だ!」

少年は、ずかずかと家の中に入り込み、奥の部屋の片隅にその木を突き立て始める。



「こ、こら!やめんか!!」

少年は老人を突き飛ばし、黙々と作業を続ける。
その表情には感情がなく、精神に障害を持っているのだろうと感じた老人は、少年をそのまま放っておくことに決めた。
少年は休むことなく作業を続け、その音は夜更け近くまで続いていた。

次の日、老人が奥の部屋で見たものは、木の杭に囲まれた牢のようなものだった。
少年はその奥で膝を抱え俯いていた。



「そこで何をしているんじゃ?」

「僕は罪人だから、牢に入ってるんだ…」

「罪人?
おまえさん、なにをしでかしたんじゃ?」

「……僕のせいなんだ…
全部、僕が悪いんだ…」

少年は詳しいことは何も話さなかった。
ただ、ピーターだという名前だということと、自分は罪人だということを繰り返すばかりだった…


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