「いいかげん、諦めたらどうなんだ!」

男は乱暴にピーターの背中を突いた。
後手に縛られ、さるぐつわを噛まされたピーターは、ナタリーと三人で暗い街道を歩いていた。



「そんなに酷く扱わないで下さいよ!
ピーターはまだ子供なんですから!」

「こいつが素直じゃないからだろ!」

「だから、さっきから何度も言ってるじゃありませんか。
ピーターはローブ様と仲が良かっただけに、ショックが大きくて今は混乱してどうにかなってるだけなんですよ。
そのうち落ちつきますから。
ね、ピーター?そうだよね?」

ピーターは潤んだ瞳をナタリーに向けたまま、何かを考えるようにしっとしていたが、やがてゆっくりと頷いた。



「可哀想に、ピーター…大丈夫だよ。
安心おし。
あの…そろそろ、このあたりで休んで行きませんか?」

「……そうだな。
隣の町まではもう少しあるから、ここで少し休むか。」

三人は街道の脇に腰を降ろした。
うなりながら首を振り、ピーターはさるぐつわをはずしてくれと訴え、
付き添いの男は文句をブツブツと言いながら、ピーターのさるぐつわをはずした。



「頼む!教えてくれ!
ローブのことをもう一度、詳しく教えてくれ!」

話すことを許されたピーターは、男に向かって懇願する。



「話してやったらこれからは大人しく行くか?」

「行くよ!
だから、頼む!」

ピーターの真剣な眼差しに、男は大きな溜息をひとつ吐き、ゆっくりと話し始めた。



「あれは、土砂降りの雨の日の次の朝のことだった。
まだ、太陽も上りきっていない時間に俺は呼び出された。
どうしたのかと思ったら、ローブ様が行方不明だって言うんでびっくりしたね。
俺達は、手を尽くして町の中を探して歩いた。
それからしばらくして、ローブ様が悪魔の館でみつかったって知らせが入ったんだ。
階段から転げ落ちて頭を打ち、血まみれになってたって話だ。」

「……ほ…本当に、ローブは死んだのか…?」

「あぁ、それは間違いない。」

その言葉を聞いた途端、ピーターは大きな声を上げて子供のように泣き出した。


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