あの事件の次の日の朝、ローブの姿が見当たらないことで、屋敷は大騒ぎとなった。
早速、関係者と町の有志により、ローブの捜索がなされた。



破魔矢のある部屋で息絶えているローブを発見したのは、町の若い男だった。



「た、大変だ!ローブ様が!」



アレクシスが現場に着いた時、その場にはすでに数人の者達が群がっていた。



「アレクシス様!ローブ様が!
それに破魔矢が…!」

アレクシスは、部屋の傍らに横たわるローブとその横に置かれた破魔矢を見て、全てを悟った。



「アレクシス様、一体、ローブ様はなんだってこんな所に…」

「まさか、ローブ様が破魔矢を!?」

町の者達は、真剣な眼差しでアレクシスの答えを待つ。



「ローブ様は…ローブ様は、悪魔に操られたのだ。
破魔矢は、とても神聖なものだ。
普通の者にはとても引き抜く事は出来ぬ。
その矢に触れようものなら、雷に打たれたように一瞬にして黒焦げになってしまうことだろう。
それを知っている悪魔達は、いつどの時代にも暁の女王に付け入る好機をうかがっていた。
女王をそそのかし、あの邪魔な破魔矢を引き抜く機会をな…
ローブ様は特にお優しい性格だったゆえ、悪魔に心を奪われ操られてしまったのだ。
先日からローブ様はどこか様子がおかしかった…それを見過してしまった私の責任だ。
お可哀想にローブ様…」

アレクシスは、ローブの傍に跪き、十字を切った。


「で、では、アレクシス様…ローブ様はなぜこんなことに…?」

「おそらく神のお慈悲だ。
神は、ローブ様が悪魔の手先になりきってしまわぬようにされたのだ。
或いは、途中で気付かれたローブ様が自ら…」

「そ、そんな…」

町の者達は、ローブを憐れみのこもった眼差しでみつめる。



「アレクシス様、さっき、おいらは落ちてた破魔矢を触ってしまったんですが大丈夫でしょうか?」

「すでに引き抜かれてあったものなら心配はないが、気になるようなら神父の所を訪ねるが良い。」

「は、はい、そうします!」



屋敷に戻ったアレクシスは昨夜のことを知っている者を集め、この地を離れることを約束に大金を手渡した。
ローブの遺体は家族の元へ運ばれ、事情を聞かされたローブの家族はその晩のうちに遠い町へ旅立った。
次の日には、新しい使用人が屋敷に到着し、町には新しい暁の女王を求める御触れが貼り出された。


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