「ローブに会わせてくれ!」

屋敷に着いたピーターは、門番に詰め寄った。



「誰だ、貴様は!?」

「僕はピーター。
ローブとは幼馴染だ。
ローブに…頼むからローブに会わせてくれ!」

「おまえ…知らないのか?
……ローブ様は先日亡くなられた…」

「う、嘘だ!
ローブはあんなに元気だったんだ!死ぬはずがない!
ローブ、中にいるんだろう?
ローブ!僕だ、ピーターだ!どこにいるんだ?」

「き、貴様、何を!!」

屋敷の中に無理やり押し入ろうとするピーターを、門番は必死になって食い止める。
もみ合いの末、ピーターの身体は門番の男によって地面に投げつけられた。



「な、なぜ、隠す!?
なぜ、ローブに会わせてくれないんだ!」

「……わからない奴だな。
ローブ様は、本当に亡くなられたのだ。
悪魔にあやつられて破魔矢を引き抜き、屋敷に戻ろうとした所、階段から足を踏み外して亡くなられた…」

「そ…そんなこと嘘だ…
あの破魔矢を引き抜いたのは僕なんだから…!
あんた、覚えてるだろう?
あの晩、僕があんたに破魔矢を渡したじゃないか!」

「何を言ってるんだ?」

「とぼけるな!三日前のあの土砂降りの晩のことを忘れたとは言わせないぞ!」

「それなら俺じゃない。
俺は、前の門番がやめたから、その代わりに昨日ここに着いたばかりだからな。」

「どういうことだ?!
……畜生!僕を騙そうとしてるんだな!」

ピーターは、男に死に物狂いで飛び掛っていった。



「や、やめろって…!
おい、誰か来てくれ!!」

騒ぎは屋敷の中にも伝わり、すぐに数人の男達が駆け付け、暴れるピーターはようやく取り押さえられた。
しかし、それでもなおピーターはわめくのをやめなかった。



「ローブに会わせろ!
ローブをどうするつもりだ!
悪いのは僕なんだ!」



「何を騒いでおる!」



その場にいた者達が一斉に声の主を仰ぎ見た。



「アレクシス様、こいつがおかしなことを…」

「おかしなこと?」

「それが…」

アレクシスがわめくのをやめないピーターを睨むと、男の一人がピーターの口の中に丸めたハンカチを詰めこんだ。


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