027 : 黄泉の笛1






(ピーター、一体、何をするつもりなの?
今度はうまくいくって…あなたは、何をどうするつもりなの?)

ローブは、部屋の中から鉛色の空をみつめながら、今朝方別れたピーターのことを考えていた。
ピーターに言われた通り、ローブは屋敷の者達にはちょっと悪戯をして隠れていただけだと言い、幸いなことに皆はそのことを素直に信じ、特にお咎めを受けることもなかった。
そして、ローブには、何事もなかったかのようにいつもと同じ退屈な時間が再開された。
だが、いつもと一つだけ違っていたのは、ローブの心の中はピーターのことでいっぱいだったということ。
別れ際のピーターの様子が気になって仕方がなかったのだ。



(ピーター…
どうか、お願いだから、危ない真似だけはしないで…!)








(なんでもないさ。
あんなものはただの迷信なんだ…
そんなに深刻に考えることはない…

そう…簡単な事だ…
矢を引き抜いて、それを屋敷の奴らに見せつけてから僕は逃げる…
矢が引き抜かれてしまった以上、ローブはもう暁の女王ではなくなる…
でも、ローブがやったことではないのだから、ローブが何か罰を受けるようなことはない筈だ…
彼女はきっと修道院に送られるだろう…
その途中で彼女を救い出し、すぐにローブを連れてお祖父ちゃんの所へ逃げる…
そして、それから彼女の家族に連絡を付けて…
それから僕は大きな町に出て働く…
働いて、働いて…死に物狂いで働いて、ローブと彼女の家族を食わせていくんだ…!)

悪魔の館のすぐ傍の物陰に座りこみ、真っ黒なローブに身を包んだピーターは先程から何度も何度も同じことを考えては立ちあがり、そしてまた少し歩いては元の場所に座りこむという動作を繰り返していた。
ここに着いた頃にはまだ明るかった空もいつの間にか薄暗くなり、鉛色の空からはぽつりぽつりと小さな雨粒がこぼれ落ちていた。


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