5
ローブの身体から、不意にピーターの温もりが離れた。
「ローブ…戻ろう…」
「……え…?」
「僕に良い考えがある。
今度こそうまくいくから…ローブ、僕を信じて…!」
ピーターが何を考えているのか、ローブには見当もつかなかった。
どうすれば良いのか戸惑っているうちに、ピーターはローブの手を取り駆け出していた。
「ピーター…ま、待って…
ど、どうする…つもりなの?」
息を切らしながら、ローブはピーターに問い掛ける。
「ローブ、安心して!
今度こそ、うまくいくから!」
ピーターはローブの方に顔を向けることもなく、そう答えた。
二人がローブの屋敷に戻った時には、もうすっかり明るくなっており、屋敷の中はいつもよりざわめいているように感じられた。
「わかったね、ローブ。
ちょっといたずらをして隠れてただけだって言うんだよ。」
ローブはピーターの言葉に黙って頷いた。
ピーターはローブを抱き抱え、高い塀の上にそっと乗せて微笑んだ。
「ローブ…幸せになるんだよ…」
「ピーター!何をするつもりなの?」
「大丈夫。
君は何も心配しなくて良いんだ。」
その時、近くからローブの名を呼ぶ声が聞こえた。
「ローブ、急いで!
皆が君を探してる!」
「でも……」
「じゃあ、僕は行くからね。」
「あ…ピーター!」
ピーターは微笑みながら手を振り、駆け出して行った。
ローブを呼ぶ声は、さらに近付いて来る…
ローブは、ピーターの後姿に気を引かれながら、高い塀から飛び降りた。
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