3
「ローブ!」
「ピーター!」
約束の場所で、二人は久しぶりの再会を十分に感じ合う時間もないままに、そっと裏口を抜け出した。
「大丈夫か、ローブ?」
「ええ、このくらいへっちゃらよ!」
ピーターに抱き抱えられ、高い塀に手をかけたローブは、両腕に力を込めて自分の身体を引き上げた。
「待ってろよ、すぐに行くから…」
「このくらい、一人で大丈夫よ!」
「あ、ローブ…!」
ピーターの心配をよそに、ローブは高い塀から飛び降りた。
「いった…」
無事に着地は出来たものの、勢い余ったローブは両手を地面に押し付けた。
「だから、待ってろって言ったのに…
大丈夫か、ローブ?」
「大丈夫、ちょっとすりむいただけだから。」
「そうか、じゃあ、行くぞ!」
ピーターはローブの手を取り、暗い夜道を走り出した。
月明かりだけを頼りに二人は人影もまばらな夜の中を力の限り走り続ける。
「疲れただろう、ローブ、少し休もう…」
ピーターがそう言ったのは、屋敷からもローブの実家からもずっと離れた見知らぬ場所だった。
二人は木の根元に並んで座り込む。
汗をぬぐい、息を整えながら、ローブがピーターに問いかけた。
「ピーター、どこに行くつもりなの…?」
「お祖父ちゃんの家だよ。
僕の母さんのお父さん。
僕の父さんが死んだ時に、うちに来てたの覚えてないかい?」
「ええ、覚えてるわ。
とても優しそうな人だった。」
「あの時、僕を引き取りに来てくれたんだけど、僕はあの家を離れたくなかったからそれを断ったんだ。
でも、お祖父ちゃんはしょっちゅう手紙を送ってくれて、いつも僕のことを心配してくれてるんだ。
君の言う通り、とっても優しい人なんだ。
だから、君のこともきっと助けてくれるよ!
さ、行こう!」
ほんの少し休んだだけで、二人はまた走り出した。
やがて、黒く染められていた空の色が少しずつその色を変え、大地の隙間から朝日が顔を出し始めた頃…
不意にローブの足が止まった。
「ローブ、どうしたんだ?疲れたのか?」
ローブは俯いて首を振る。
「ピーター…私…やっぱり行けない…」
「ローブ、ここまで来て何を言ってるんだ!」
「駄目…!」
ローブは、両手で顔を覆い、足に根が生えたようにその場に立ち尽す…
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