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「爺さん、さっきのあの…ピーターって奴のことなんだけどさ…」
食事が済んだのを見計らって、リュックが先程の少年のことを切り出した。
「あぁ…わかっとる…」
リュックが聞かずとも、老人は最初から話すつもりだったようだ。
「奴のことは、実はよくわからんのじゃ。
わしが、ここに家を建ててしばらく経ってからのことじゃ。
突然、奴がやってきて、自分は罪人だから牢屋に入れてくれと言ったんじゃ。
おかしな奴じゃと思いながら、相手にもせずに放っておいた。
そのうち奴は勝手にあの牢屋を作り、その中に入って住むようになった。
しかも、牢の中に入ったまま、そこから一歩も出て来ようとはせんかった。
もちろん詳しい話しもせん。
関わりになるのはいやだったんじゃが、そうなってしまうと放っておくわけにもいかん。
食べなきゃ死んでしまう。
奴は、日に日に心が壊れていくようで、最初のうちはたまに言葉も交わすこともあったが、そのうちそんなこともなくなった。
奴にはよほど辛いことがあったのかもしれんな。
そう思うとだんだんと奴のことが気の毒に思えて来てな。
それと同時に、毎日、奴の世話をするのがわしの生きる張り合いのようにもなっていったんじゃ。
……だが、わしはこの通り、もう年じゃ。
わしが死んでしまったら、ピーターはどうなるのか…
それが、気がかりでな…」
「ずいぶんと不思議な話だな。
ピーターは、なんだって、自分のことを罪人だなんて…」
「すみませんが、ちょっとその方に会わせていただけますか?」
クロードが、老人にそう申し出た。
今の話の内容から、ピーターの容態に関心を持ったのだろう。
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