「あの時、あなたには赤ちゃんが死んだと言ったけど、実は父さんがどこかへ連れて行ってしまったの。
どこへ連れて行ったのかは、ずっと言わなかったわ。
あなたがいなくなってから、父さんは塞ぎこむようになって、そのうち体調も悪くなったの。
そして、ついに…
その時、やっと私に打ち明けたのよ。
赤ちゃんを孤児院の前に捨てたって…
でも、どこの孤児院かもわからなかったし、その子の行方はわからないままなの…」

その言葉に、キャロルはブランドンの手を握り締めた。
ブランドンの瞳には、こぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。



「母さん、兄さん…
この人が…その赤ちゃんなの。
私の息子なのよ。」

「本当なの!?この子が、あの……
で…でも、どうやって、あなた、この子の行方をみつけたの!?」

「それは…神様のお引き合わせとしか思えない…
実はね…」

キャロルは、ブランドンと会ったいきさつを話した。
キャロルの母や兄は、信じられないといった表情でその話に聞き入っていた。



「僕も、今回のことは信じられない想いです。
フランクリンとの偶然の出会いから、まさかこんなことになるなんて…」

「本当にごめんなさいね。
亡くなったあの人は、そりゃあもうキャロルのことが可愛くて…
自分のやってることがわからなくなってしまってたんだと思うわ。
でも、死ぬ前にはとても後悔していたと思います。
自分のしたことであなたに気の毒な想いをさせてしまったことを、申し訳なく思ってた筈よ。
どうか…どうか許してやって下さいね。」

「いいえ、僕は誰も恨んでなんかいません。
僕は邪魔だから捨てられたんじゃなかった…
それがわかっただけで僕は幸せです。
その上、ひとりぼっちだと思ってた僕に、血の繋がった人がいたことがわかって…
僕は…僕は、もうこれ以上望むものは何もありません。」

「ありがとう、ブランドン!」



次の日、キャロルとブランドンは、キャロルの父の墓を訪ねた。
悲しい対面ではあったが、キャロルの父親はきっと喜んでいると言って、母親はそっと涙を拭った。



(父さん、ブランドンと会わせてくれてありがとう。)

キャロルは父親の墓前に白い薔薇の花を手向け、祈りを捧げた。


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