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「そうなんですか?!
キャロルさんの息子さんも来月がお誕生日だったんですか?」
「ええ、生きていたら来月の十七日で二十九歳でした。」
「十七日ですか…僕が捨てられていたのは十八日だったそうです。
本当の誕生日はわからないから孤児院では十八日を僕の誕生日とされていました。」
その言葉に、キャロルの表情が強張った。
「まさか…こんな偶然があるのかしら…
信じられませんわ。」
キャロルは、頭を抱え、その視線はぼんやりと一点をみつめていた。
「……ブランドンさん、おかしなことを言うようですが…
あなた足の裏にほくろなんてありませんよね?
そう…右足の裏の真ん中あたりです。」
「キャロルさん!どうしてそんなことを…?!」
「……まさか…!
ほくろがあるというのですか?」
ブランドンは靴下を脱ぎ、キャロルに足の裏を見せた。
そこには、少し目立つ大きさのほくろがあった。
キャロルは、両手で頬を押さえ、放心した表情でそれを見つめている。
「キャロルさん…なぜ僕のこのほくろのことをご存知なんですか?」
その言葉にキャロルは青ざめた顔をゆっくりと振るばかりで、何も言えないでいる。
ブランドンは、キャロルにお茶をすすめ、その背中を優しくなでた。
「大丈夫ですか、キャロルさん。」
「……ええ…大丈夫…大丈夫です…」
お茶を飲んでしばらくすると、やっとキャロルは落ちつきを取り戻したように、ぽつりと口を開いた。
「ブランドンさん…驚かないで下さいね。
私の息子には…あなたと同じ場所にほくろがあったのです。」
「まさか…!」
「ブランドンさん…
私…家に戻ってみます。」
「家に…なぜですか?」
「……同じ頃に生まれて同じ場所にほくろがある…
こんな不思議な話があるはずがありません。
ブランドンさん!私は息子の亡骸を見てはいないのです。
辛いから見ない方が良いと言われ、見ていないのです。
その後、私はすぐに家を出ましたから、もちろん、墓がどこにあるのか知りません。
二十九年もたった今、私はやっとそのからくりに気付きました。
それを確かめに行って来ようと思います。」
「それでは…それでは、もしやあなたが僕の……
いや、まさか、そんなこと……」
キャロルはゆっくりと頷き、彼女の瞳には熱い涙が浮かび、その頬を伝った…
ブランドンの瞳からも涙が流れ、二人は何も言わず強く抱き合った。
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